トップ > メルマガ – バックナンバー > AKB48の国のタレントマネジメント 2013.06.28

AKB48の国のタレントマネジメント
【第8号】「日本の良さをどう活かす?」

フォスターリンク株式会社 代表取締役社長 倉島 秀夫

近年ビジネスの世界では、「グローバル」という言葉がキーワードになっています。私はグローバルというのは簡単に言うと、“一つ”という意味だと理解しています。 世界中のあらゆる国々を“一つ”としてとらえた地球(グローブ)という市場に対して事業展開するのがグローバル企業です。
日本企業も大手メーカーは既にグローバル市場で事業展開してきましたが、今後はサービス業や中堅・中小企業にとっても、グローバル化の流れは避けて通れない道になるでしょう。
これまで以上に多くの日本企業が、グローバル企業として、グローバル競争に挑むために、グローバル人材を育成しなければならない、という訳です。

これまでにアメリカと日本で仕事や生活をしてきて、ずいぶん違うなと感じたことを述べてきましたが、こういう違いがなぜ生まれるのかと言うと、国の成り立ち方の違い、国民性の違い、文化の違い、価値観の違いといったことが根本にあるからだと思います。 そしてそれらの根本的な違いが、社会制度の違いや生活習慣の違いといったところに表れてくるのでしょう。

そうした違いがあることを認識した上で、では日本企業がグローバル市場で競争してゆくときに、どういう戦い方をすれば良いのでしょうか?
私は、グローバル競争においてこそ、日本の良さ、日本企業の強みを活かした戦い方をすべきだと考えます。アメリカと日本の違いを認識した上で、私なりの意見を述べてみます。

アメリカは何と言っても「多様性の国」です。そして多様性に富んだ国だからこそ、アメリカ人に共通した価値観やものの考え方というのがあるように思うのです。逆の言い方をすると、多様な人間の集まりであるからこそ、 誰もが受け容れられる共通の価値観を持っていなければならない国、それがアメリカです。
アメリカ人が共通して持っている価値観とは、①合理性を重視する点、②フェアネス(公平性)を重視する点、③自己責任・自己防衛の原則を重視する点、の3つであるように思います。

アメリカに住んでいて感じる機会が多かったのですが、アメリカは大変合理的な社会です。
多民族による多様性に富んだ国家なので、誰にとってもわかりやすく、理に適ったルールでないと受け容れられないのでしょう。
アメリカで車を運転しているだけでも、いくつか合理的だなと思ったことがあります。
例えば、有料の橋を渡るときにお金を払うのは片側だけです。橋を渡った車は必ず帰りに反対側から渡って戻ってくるので、行き道で通行料を払ってもらえば帰りは不要ということです。
また直進信号が赤でも、右折はできます。これは、アメリカで車は右側通行ですが、直進信号が赤でも、左側からの車が来ない場合は別に待つ必要は無く、右折しても良いというルールなのです。
通勤時間帯の渋滞を緩和するために、フリーウェイ(高速道路)にカープール(Carpool)という2人乗り以上の車しか通ってはいけないレーンを設けたりするのも合理的だなと思っていました。
ちょっとしたことではありますが、無駄な作業や時間はなるべく省こう、ということなのだと思います。

フェアネス(公平性)を重視するという点に関しては、アメリカでは“チャンスは公平に与えられなければならない”という考え方が社会に浸透しています。つまりチャンスが公平に与えられるのであれば、結果は同じ(平等)でなくてもOK、 むしろ違って当然、というのがアメリカの考え方です。
“差別をしてはいけない”ということはアメリカ社会の大原則なのですが(※表向きはそうですが、現実には差別はあります)、これも要するに差別はフェアではないという理由からです。
私もビジネスでいろいろな交渉の場面に遭遇しましたが、最後の落とし所は双方にとって“フェアであるかどうか”という点でした。

自己責任・自己防衛の原則は、アメリカで生活しているといろいろな場面で選択肢を与えられて、自分自身の判断で道を選んでゆかなければならないケースが多いところでわかります。
自己防衛に通じることとしては、銃社会のアメリカ、あれだけ銃による事件が発生しても、銃を放棄しようとしないのも、自分の身は自分で守るのだという本能のようなものが働いているとしか思えません。

こういった原則は、アメリカでは建国以来200年以上の長い時間をかけて築かれてきたものですので、他国が簡単に真似できるものではありません。
“グローバルスタンダードとはアメリカンスタンダードと同義である”という意見を聞いたことがありますが、グローバル市場といっても中身は多様な国々の集まりですので、アメリカ社会の合理性、公平性の原則、そして自己責任・自己防衛の原則というのは、 誰にとってもわかりやすいという点で、やはり普遍的(スタンダード)で受け容れられやすい考え方なのでしょう。

またビジネスの世界におけるアメリカ企業のスタンダードは、要するに“いくら利益を上げたのか”の一点に尽きるでしょう。グローバル競争においてもアメリカンスタンダードが幅を利かせています。
アメリカ企業が得意とする将棋型の勝負で言うと、相手の王将を詰むことが唯一の勝利であって、その他には何もありません。これもまた単純明快な理屈です。

翻って日本の社会、日本企業はどうでしょうか?
日本では、近江商人の心得である「三方良し」、“売り手良し(従業員)、買い手良し(顧客)、世間良し(社会)”の精神が受け継がれているからなのか、①モラルの高さ、②勤勉さ、そして③ホスピタリティの高さが際立っていると思います。

一つ目のモラルの高さについてですが、モラルとは道徳観、倫理観のことです。
モラルに関するエピソードとして、大学時代、カリフォルニア大学に留学していたときに、キャンパスのあるバークレー市で暴動が起きたことがありました。理由は確か、昔ヒッピーの親玉みたいな人(※バークレーはヒッピー文化発祥の地)が殺されたことがあり、 その日から何年か経った記念日(?)だったそうです。そんな些細なことがきっかけでヒッピーたちが騒ぎ出し、そしてカリフォルニア大学の学生たち(だけではなかったと思いますが)がそれに便乗して大暴れしだしたのです。 通りの信号機は壊され、商店街の店のガラスが割られて中から商品が盗み出され、火をつけられた車もありました。
私は当時大学の寮に住んでいたのですが、寮生が店から盗み出したラジカセ(※今は見なくなりましたが、ラジオとカセットデッキが一体になったポータブル音楽プレーヤー)を誇らしげにみんなに見せているのを見て、唖然としました。

日本を見れば、東日本大震災のときに見せた東北地方の人たちの道徳観、倫理観の高さに世界中が驚いたことは記憶に新しいですし、また被災地の復興を支援するためにと立ち上がった日本国民が見せた結束力も素晴らしいものでした。 東日本大震災は痛ましい出来事ですが、一方で日本人の道徳観、倫理観の高さが世界に示された場面だったとも思います。

グローバル化する世界の中で、日本人のこうした道徳観、倫理観の高さを示す場面は、日本が他の国々から一目置かれる部分であり、競争優位の源泉になるのではないかと思います。
道徳観や倫理観の高さを強みとしてグローバル競争を戦うというのは、なかなか実践しにくいことかもしれません。ただジョイントベンチャーなどのビジネスパートナーとして一緒にビジネスをやろうとする場合、もしくは消費者としてある企業の製品を買ったり、 サービスを受けたりしようとする場合、その企業の道徳観や倫理観の高さが「信用」という武器になることはあるのではないでしょうか。

2つ目の勤勉さということに関して、日本企業はすごいなと感心することがあります。
それは、商品の種類がやたらと多くて、さらには新商品が次から次へと出てくることです。例えば日本のスーパーマーケットに行くと、お菓子(例えばポテトチップス)やアイスクリーム、ビールやソフトドリンクの種類の多さに驚かされます。 アメリカではお菓子やアイスクリームの種類はそれほど多くはなく、また新商品がどんどん出てくるということはありません。ビールやソフトドリンクも、いつ買いに行っても定番商品が棚に並んでいます。
これは日本人が勤勉だからというよりは、単に日本の消費者が新しいもの好き(別の言い方をすれば飽きっぽい?)であることが大きな理由かもしれません。ただとにかく日本企業は消費者の要求に応えようと、製品やサービスを常に改良、改善し続けます。 正直、やり過ぎではないかと感じるほどですが、この粘り強く取り組む姿勢こそが日本企業の勤勉さの証であるように思います。

勤勉さに関してもう一つ日本企業の強みだと思うことは、“みんなで寄ってたかってやる”、という姿勢です。もちろん日本企業の組織の中でも一定の役割分担はあるでしょうが、一つのテーマや課題に対してそしてそのベースにあるのが、 仕事自体や仕事仲間に対するロイヤリティ(愛情・忠誠心)なのでしょう。
寄ってたかって考えたり、作業をしたり、そしてトライ&エラーを繰り返すうちに、現場でのさまざまな知恵が蓄積されます。そしてその蓄積がさらに積み重なって、イノベーションが生まれることもあります。
日本でイノベーションが起きるのは、たいてい仕事の現場においてです。現場における協調、共感、結束といった一体感が日本企業の強みであり、こういった一体感の形成力もグローバル競争においては大きな武器になると思います。

“勤勉さ”も“寄ってたかって”というのも日本人特有の価値観、行動特性であり、他国の人たちに理解・実行してもらうのは無理ではないかという意見もあるかもしれません。
ただ日本のメーカーが海外に工場を作って高品質の製品を製造している訳ですし、近年ではヤマト運輸のようなサービス業も、多くの苦労をしつつも現地の従業員が日本と同様のサービスを提供できるよう社員教育に取り組んでいるように、 現場が一体になって働くという価値観は他の国々でも十分に受け容れられているのではないでしょうか。

3つ目のホスピタリティについてですが、ホスピタリティとは何かというと、お客様や地域社会、つまり自分にとって身近な存在に貢献したいという“おもてなしの心”です。
ホスピタリティに関してふと気付いて感心することがあります。例えば日本で国内線の飛行機に乗っていて、飛行機が滑走路に向かうときに窓外を見ると、整備員や機体を誘導していた人たちが一列に並んで大きく手を振り、最後にそろって深くおじぎをしてくれます。 こうした光景を見ると、“ああ日本だなあ”と思うのです。
普段の生活でも、スーパーマーケットやコンビニで買い物をしたり、ガソリンスタンドやレストランに行くと、店員さんはきびきび、てきぱきと働いています。またカスタマーサービスに電話をしたり、 市役所などの公的機関に行ったときの対応もきちんとしています(※アメリカがひどかったので余計にそう感じるのかもしれません)。
“そんなことは当たり前じゃないか”と思われるかもしれませんが、これはすごいことだと思います。もちろん日本でもたまに“何だよ!?”と思うサービスを受けることもありますが、アメリカにいたころは結構この“何だよ!?”と思う場面がありました。

ホスピタリティは、“礼儀作法”や“品格”といったことにもつながります。ホスピタリティという言葉と直接結び付かないかもしれませんが、礼儀作法や品格は相手を敬う気持ちに通じます。
日本の武道では特に礼儀作法や品格が大切にされます。例えば相撲や剣道では、“正々堂々と美しく勝つ”ということが重視されます。横綱相撲という言葉もあるように、横綱は立ち合いでは相手を正面で受け止め、そして堂々と相手を寄り切る、 もしくは豪快に投げ飛ばす、といった勝ち方を常に期待されています。剣道では(※相撲もですが)試合場内でのガッツポーズは負けた相手に失礼だということで、やってはいけない行為です。柔道でも本来、試合の勝者がガッツポーズなどをやるのは慎むべきものでした。 ただ柔道は国際化したがために、試合相手に対する礼儀や負けた相手を思いやる気持ちという美学がどこかに押しやられてしまい、勝てば良いじゃないか、勝者が喜んで何がいけないのか、ということになってしまったような気がします。

品格などという概念は日本人だから理解できるのであって、他国の人たちには理解できないのではないかと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。品格や礼儀作法というのは結局のところ“相手を思いやる気持ち”に通じるもので、 これはもちろん日本人にだけ備わっているものではありません。
私は小学生のころから現在に至るまでずっと剣道をやっており、アメリカに住んでいたときもアメリカ人に剣道を教えていました。相手を敬う、礼儀作法、品格といった概念はアメリカ人の剣道愛好家も十分に理解していましたし、 むしろ日本人以上にそういった精神性を大切にしていました。

江戸幕府が日本を統治していた265年という時代は、国内に大きな戦争が無かったという点で世界史上でも極めて珍しく長く平和が続いた時代でした。しかしながら江戸末期に欧米列強に開国を迫られて以降、明治維新後にかけての日本は、 やはり富国強兵という当時のグローバルスタンダードで戦わざるを得なくなりました。
ビジネスの世界で日本企業が置かれている状況は、ある意味明治維新前後に日本という国が置かれた状況に似ています。グローバル化が進み、否が応にも強烈な競争志向、成果志向の欧米およびアジア企業と戦わなければならなくなりました。

このような競争相手に対して、日本企業はどのような戦い方をすれば良いのでしょうか?
日本企業の強みはこれまで述べてきたように、道徳観・倫理観の高さ、勤勉さ、ホスピタリティの高さだと思うのですが、これを一言で言うと「大和魂」ではないかと思っています。大和魂という言葉は太平洋戦争中に偏った意味で使われたため、戦後は忌避され、 今ではほとんど使われなくなりました。
大和魂などという言葉を使うと偏狭な国粋主義者をイメージされるかもしれませんが、私はもちろんそういう人間ではありません。ただ、社会に貢献するために正しい行動を取ろうとする道徳観・倫理観の高さ、まじめにこつこつ仕事に取り組み続ける勤勉さ、 相手に対する尊重をベースとしたホスピタリティの高さということを考えたときに、これこそ大和魂の根幹ではないかと思うのです。

私の大学時代のゼミの指導教官は竹内弘高先生(現ハーバードビジネススクール教授)という教授だったのですが、先生は当時我々ゼミテンに、“GNNを大切にしろ”と繰り返しおっしゃっていました。
GNNとは、G(義理)、N(人情)、N(浪花節)の頭文字なのですが、先生もGNNという言葉によって大和魂の大切さをおっしゃっていたのだと思います。
グローバル競争において日本企業としては、高い倫理観・道徳観、勤勉さ・粘り強さ、相手を尊重するおもてなしの心(ホスピタリティ)を大切にし、顧客との長期にわたる信頼関係を築きながら事業を一歩一歩着実に展開する、ということを忘れてはいけないように思います。

【第9号】「がんばれ中堅企業」
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