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4月 28, 2025
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人事システム選定で考慮すべき7つの観点

 

 

企業の人事業務を効率化し、正確なデータ管理を実現するために人事システムの導入は欠かせません。しかし、数多くの人事システムが提供されている中で、自社に最適なものを選ぶのは容易ではありません。ここでは、人事システムを比較・選定する際に考慮すべき7つの観点について詳しく解説します。
本記事は、2025年2月に出版した「日本の人事システムの選び方と活用法」から抜粋してまとめています。

1. 必要な機能が備わっているか

まず最も重要なのは、「自社の業務に必要な機能が揃っているか」という点です。人事システムには様々な機能が搭載されていますが、すべての機能が自社にとって必要とは限りません。業務プロセスを整理し、必須の機能と不要な機能を明確にしましょう。

例えば、以下のような業務をシステム化したい場合、それに対応する機能が含まれているかをチェックしましょう。

業務

必要な機能の例

採用管理

応募者情報管理、面接スケジュール管理、内定者フォロー

勤怠管理

出退勤記録、残業申請、休暇管理、シフト作成

給与計算

基本給・手当の計算、社会保険料の自動計算、給与明細発行

評価・目標管理

目標設定、評価シート、フィードバック管理

人材管理

スキル・資格管理、異動履歴、社員データベース

企業ごとに、人事システムに求める機能は異なります。例えば、採用を強化している企業であれば、応募者管理や選考プロセスを効率化する機能が重要になります。一方、労働時間の適正管理が課題となっている企業では、勤怠管理やシフト管理機能が必須です。

また、オールインワン型の人事システムを導入すれば、複数の業務を1つのプラットフォームで管理できますが、特定業務に特化したシステムのほうがより高機能で使いやすい場合もあります。

どの業務を優先するのかを明確にし、必要な機能を見極めることが重要です。

ポイント

•    「オールインワン型」のシステムと「特定業務特化型」のシステムがある。
•    不要な機能が多すぎると操作が複雑になり、コストが増加するため、適切なバランスが重要。
•    将来的に業務が拡大する可能性がある場合、拡張性のあるシステムを選ぶ。

 

2. 自社の規模や業務に合っているか

人事システムは企業の規模や業務形態に応じて適切なものを選ぶ必要があります。企業の成長フェーズや事業内容によって、求められる機能や操作性は異なります。

例えば、従業員数が少ない企業が大企業向けの高機能な人事システムを導入すると、「機能が多すぎて使いこなせない」「コストが高すぎる」 という問題が発生する可能性があります。

一方で、成長を見越して拡張性のあるシステムを選ばなければ、将来的に再導入が必要になることも。

企業の規模に応じたシステム選びは、コストや運用の負担にも影響します。例えば、数十人規模のベンチャー企業であれば、シンプルで安価なクラウド型の人事システムが適しています。

一方、数千人規模の大企業では、カスタマイズ可能なオンプレミス型システムや、大量のデータ処理に対応できるものが求められます。

また、業界によっても必要な機能が異なります。例えば、製造業ではシフト管理が重要視されるのに対し、IT企業ではリモートワーク対応やプロジェクトベースの評価管理機能が求められることが多いです。

ポイント

•    現在の業務課題を解決することを最優先にし、将来的な拡張性も考慮する。
•    無料トライアルがある場合は、実際に触ってみて自社の業務フローと合うか確認する。
•    業種・業界ごとの特性に合った人事システムを選ぶ。

 

3. 使いやすさ(UI/UX)は十分か

どんなに高機能でも、使い勝手が悪ければ現場に定着しません。操作が複雑な人事システムは、従業員の負担となり、業務効率が下がる可能性があります。そのため、UI/UX(ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンス)が優れているかを確認することが重要です。

人事システムの導入は、人事担当者だけでなく、従業員全体に影響を与えます。例えば、勤怠管理や休暇申請を従業員自身が行う場合、スマートフォンでも簡単に操作できるUIが求められます。

また、人事担当者が評価管理や給与計算を行う際に、直感的に操作できる画面設計でなければ、導入後の活用が進まない可能性があります。

チェックすべき例

•    直感的な操作ができるか(マニュアルを読まなくても使えるか)
•    スマホやタブレットでも利用しやすいか。
•    従業員が簡単に入力できる設計になっているか。
•    フィルタや検索機能が充実しているか。

ポイント

•    業務フローに沿ったUI/UX設計がされているか確認する。
•    利用者のITリテラシーに応じた操作性を確保する。
•    デモ画面や無料トライアルを活用し、実際の操作感を確認する。

 

4. セキュリティ対策が万全か

人事データには、従業員の個人情報や給与情報など、機密性の高いデータが含まれます。そのため、セキュリティ対策が十分に講じられているかを確認することが重要です。

セキュリティ対策には、以下のようなポイントがあります。

•    データの暗号化:保存データや通信データが暗号化されているか。
•    アクセス制限:ユーザーごとにアクセス権限を設定できるか。
•    ログ管理:操作履歴が記録され、不正アクセスを監視できるか。
•    バックアップ体制:万が一の障害時にデータを復旧できる体制が整っているか。

また、クラウド型の人事システムを選ぶ場合は、提供企業がどのようなセキュリティ対策を行っているか(ISO27001認証の取得、データセンターの管理体制など)を確認することも重要です。

ポイント

•    人事データは機密性が高いため、セキュリティ対策を十分に確認する。
•    データの暗号化、アクセス制限、ログ管理などが備わっているかをチェックする。
•    クラウド型の場合、提供企業のセキュリティ基準や運用体制を確認する。

 

5. 他のシステムとの連携性

人事システムは単体で運用するのではなく、給与計算システムや勤怠管理システム、会計システムなどと連携して運用することが多いです。そのため、他のシステムとスムーズにデータ連携できるかを確認しましょう。

システムの連携方法には、以下のような種類があります。

•    API連携:リアルタイムで他システムとデータをやり取りできる。
•    CSV/Excelインポート・エクスポート:手動でデータをやり取りする。
•    RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション):自動化ツールを利用して異なるシステム間のデータを処理する。

API連携が可能な人事システムであれば、手作業を減らし、業務効率を向上させることができます。一方で、連携可能なシステムが限られている場合は、手動でのデータ移行が必要となる可能性があるため注意が必要です。

ポイント

•    給与システムや会計システムなどとスムーズに連携できるか確認する。
•    API連携が可能か、それとも手動でのデータ移行が必要かをチェックする。
•    既存の業務フローを大きく変更せずに導入できるかも考慮する。

 

6. 導入コストと運用コスト

人事システム導入時には、初期費用だけでなく、運用にかかるコストも考慮する必要があります。

システムのコストには、以下のような種類があります。

•    初期費用:システム導入時のライセンス費用、設定費用、カスタマイズ費用など。
•    月額費用:クラウド型システムの場合、サブスクリプション型の料金体系が多い。
•    保守・サポート費用:システムの運用サポートやアップデート費用が含まれる。

特に、クラウド型の人事システムは月額費用がかかるため、長期的なコストを試算しておくことが重要です。また、オンプレミス型の場合はサーバー管理やメンテナンスの費用も考慮する必要があります。

ポイント

•    初期費用、月額費用、保守費用などを総合的に比較する。
•    クラウド型とオンプレミス型のコスト構造を理解し、最適な選択をする。
•    長期的な運用コストも試算し、総コストを把握する

 

7. サポート体制と運用のしやすさ

人事システムを導入した後も、トラブル対応や運用サポートが必要になります。そのため、提供企業のサポート体制や運用のしやすさを確認することが重要です。

サポート体制を確認する際には、以下の点をチェックしましょう。

•    問い合わせ対応の充実度:電話、メール、チャットなど、どのような手段で問い合わせができるか。
•    対応時間:24時間対応か、営業時間内のみか。
•    マニュアルやFAQの充実度:自己解決できる情報が用意されているか。

また、システムの運用がしやすいかも重要なポイントです。サポートに関わる画面の使いやすさや、定期的なアップデートの有無などを確認しましょう。

ポイント

•    問い合わせ対応の手段や対応時間を確認する。
•    自社でスムーズに運用できるか、サポートに関わる画面の使いやすさをチェックする。
•    マニュアルやFAQが充実しているかを確認する。

 

まとめ

人事システムを選定する際は、機能、規模適合性、使いやすさ、セキュリティ、連携性、コスト、サポート体制の7つの観点を総合的に考慮することが重要です。導入後の運用を見据え、自社に最適なシステムを選びましょう。

 

 


執筆者プロフィール

永井さんT永井 信義 (ながい のぶよし)

1991年から一部上場の非鉄金属メーカーの人事部に15年勤務後、伊藤忠商事のグループ会社で人事コンサルタントとして人事制度の構築などの業務を経験。
2010年からフォスターリンク㈱にて人事労務業務の効率化や人事関係のシステムの導入支援などを行っている。
著書:「日本の人事システムの選び方と活用法」(2025年2月出版)。
保有資格:第一種衛生管理者、RSTトレーナー、ISO14001内部監査員など。

 

 

 

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