企業にとって「人」は最も重要な経営資源です。そして、その人材をどのように管理・活用していくかは、組織の成長と持続的な競争優位性に直結します。そのために必要なのが「人事管理」の仕組みですが、特に中小企業や創業フェーズの企業では、まずはExcelで管理しているというケースも多く見受けられます。
本記事では、人事管理に役立つ無料エクセルテンプレートの紹介とともに、Excelと人事管理システムの違いを専門家の視点で解説します。
それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社に最適な人事管理方法を検討する一助となれば幸いです。
1.そもそも人事管理とは何か?
人事管理とは、従業員の基本情報、入退社手続き、勤怠・労働時間の把握、評価、異動履歴、スキル情報など、人材に関するあらゆる情報を一元的に把握・管理することを指します。
単なる名簿管理にとどまらず、「適切な人材配置」や「公正な評価」「キャリア育成」のベースにもなる重要な業務です。
近年では「戦略的人材マネジメント(タレントマネジメント)」という考え方が主流となり、データを活用した人事判断が求められています。
▶ 人事管理については、こちらの記事もご確認ください。 |
2.無料の人事管理エクセルテンプレートでできる人事管理の範囲
弊社が提供する無料テンプレートでは、以下のような人事情報を簡潔に管理できるように設計しています。
- 従業員基本情報(氏名、生年月日、入社日、連絡先 等)
- 人事異動や研修の履歴
- 保有資格や評価の履歴 等
これらを一覧で把握できることにより、社内の人事情報を可視化しやすく、簡易的な人事台帳として利用可能です。
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3.Excelで人事管理を行う手順
Excelシートを用いて人事管理を行う方法について、具体的に解説していきます。
STEP1:人事管理に必要な情報を整理する
まず最初に行うべきは、どのような人事情報を管理するのかを明確にすることです。
必要な人事情報については会社や組織のニーズにより様々ですが、以下のような情報が一般的に必要とされます。
- 氏名、社員番号、所属部署、役職
- 入社日、雇用形態
- 給与情報、昇給履歴
- 評価結果、異動履歴、研修受講歴
この情報を整理したうえで、どのようなシート構成にするかを検討していきましょう。
STEP2:Excelのシート構成を設計する
人事情報は多岐にわたるため、一つのシートにすべてをまとめるのではなく、情報の種類ごとに分けるのがポイントです。
例えば、基本情報のシートには氏名・所属・入社日を。給与情報のシートには基本給・等級・適用日をといったように設計していくようにしていきましょう。
こうすることで、今後データ量が増えても整理された状態を保ちやすくなります。
STEP3:データを入力・管理する
シートが整ったら、実際にデータを入力していきます。
このときに重要なのが、入力ルールをあらかじめ定めておくことです。
具体的には、名前や日付は統一した形式で入力すること(例:西暦、フルネーム)や、数値データには必ず単位を明記すること(例:年齢「28歳」、勤続年数「5年」)などのルールとなります。
入力ミスを防ぐためにも、あらかじめ決められた回答についてはデータの入力規則機能を活用することも検討していきます。
また、定期的にバックアップを取る運用も忘れないようにしましょう。
STEP4:集計や分析の仕組みをつくる
Excelの強みは、関数やピボットテーブルを活用して柔軟な集計ができることです。
例えばExcelを用いれば部署ごとの社員数をカウントする、勤続年数の平均を算出する、評価結果をピボットで一覧化するなどの集計も可能となります。
こうした集計や分析の仕組みを作ることで、データが人員を見える化するための資料として活用できるようになります。
STEP5:運用ルールを整備する
Excel管理は手軽な反面、属人化や入力ミス、データ破損などのリスクがあります。
そのため、次のような運用ルールを整備しておくことが重要です。
- 管理ファイルはクラウドで共有
- 編集履歴を記録する または バージョンを管理する
- 月1回の棚卸や更新日を設ける
- 担当者以外が不用意に編集できないよう、保護設定を行う
Excelのデメリット面も意識しながら、安全に運用できるよう事前に検討しておきましょう。
4. Excelで人事管理をするメリットや注意点
Excelで人事管理をするメリットとデメリットや注意点については、以下のような点が挙げられます。
メリット | 注意点 |
・初期コストがかからない ・柔軟なカスタマイズが可能 ・データの可視化がしやすい |
・データ量が増えると扱いが困難 ・情報の一元管理が難しい ・属人化しやすい ・他システムとの連携がはかりずらい |
Excelはスタートアップ段階では有効ですが、従業員数の増加や人事業務の複雑化により、次第に限界を迎えます。
貴社の状況やニーズに応じて運用方法を見直す必要が生じます。
5. 人事管理システムとの違いとは?
Excelによる人事管理と、人事管理システムによる人事管理には、操作性・拡張性・安全性・効率性といった点で明確な違いがあります。
以下に両者の違いを項目ごとに詳しく比較して説明します。
5-1. 基本的な使い方と導入のしやすさ
Excelは、多くの企業に標準で導入されているため、特別な準備やコストが不要で、すぐに人事管理に使い始めることができます。自社でテンプレートを作成したり、無料で配布されている雛形を使うことで、簡単に人事台帳や勤怠表を作成できます。
一方、人事管理システムはベンダーとの契約が必要であり、導入時に設定や研修などの準備が求められるため、一定の時間と初期コストがかかります。
ただし、一度設定してしまえば、運用は非常にスムーズです。
5-2. 管理できる情報と連携性
Excelは社員情報・勤怠・評価などを個別に管理することが多く、それぞれが別ファイルになりやすいため、情報の連携や統合が手間になります。たとえば、異動や昇給に関する情報を複数のファイルに手動で反映する必要があり、ミスが発生する可能性も高くなります。
一方、人事管理システムでは、社員情報を一元的に管理でき、異動・評価・給与などの情報が連携されています。データの整合性が保たれ、自動的に各所に反映されるため、管理の手間とリスクが大幅に減少します。
5-3. セキュリティとアクセス管理
Excelファイルはパスワードをかけて保護することができますが、ファイルそのもののコピーや誤送信、共有設定ミスによる情報漏洩のリスクは避けられません。また、誰がいつ何を変更したかを追跡することが困難です。
それに対して人事管理システムでは、ユーザーごとにアクセス権限を細かく設定でき、管理職は部門単位で、従業員は自身の情報だけを確認できるといった制御が可能です。加えて、変更履歴の記録、IP制限、暗号化通信など、高いレベルのセキュリティ機能を備えています。
5-4. 作業効率と自動化の程度
Excelでは、数式やマクロを使うことである程度の自動化はできますが、作成・運用のノウハウが必要で、管理が属人化しやすいです。たとえば、評価シートの集計や年末調整書類の作成などには、毎回手間がかかります。
一方、人事管理システムでは、ワークフロー機能により申請〜承認の流れが自動化されたり、リマインド機能により提出漏れを防止したりすることができます。また、評価データの集計や帳票の出力などもボタン一つで対応でき、担当者の業務負荷が軽減されます。
5-5. サポートと運用体制
Excelを使っている場合、操作トラブルやマクロの不具合などが発生しても、基本的には社内で対応する必要があり、担当者のスキルに依存します。また、法改正(例:雇用保険料率の変更や育児・介護制度の更新など)にも都度対応が必要で、更新ミスが起こることもあります。
それに対して人事管理システムでは、ベンダーによるサポート体制があり、操作説明・不具合対応・法改正の自動アップデートなどが提供されるため、安心して運用を続けることができます。
6. Excelテンプレートからシステム移行を検討すべきタイミング
以下のような状況に該当する場合、Excelからの移行を検討すべきです。
- 従業員数が50名を超え、手作業では管理しきれなくなってきた
- 人事異動や評価の履歴をスムーズに確認したい
- 情報の重複入力や転記ミスが頻発している
- 勤怠・給与・労務などのデータを一元管理したい
- 働き方改革・法改正に対応する必要がある
「人事業務に時間がかかりすぎている」「人材情報が点在していて意思決定に時間がかかる」といった声が現場から上がってきたら、システム導入のサインと言えます。
7. まとめ|まずはExcelテンプレートから“可視化”を
人事管理の第一歩は、正確な情報を把握することです。
Excelテンプレートはその第一歩として非常に有効なツールであり、無料で試せるという手軽さも魅力です。
しかし、企業が成長し、従業員数が増えるにつれて、人事管理にはスピード・正確性・連携性が求められます。
そのときに力を発揮するのが、人事管理システムです。
まずはテンプレートで情報の整理・可視化を行い、将来的なシステムへの移行も見据えて、戦略的な人事管理体制を整えていきましょう。
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