コンプライアンス違反に起因した企業の不祥事は後を絶ちません。コンプライアンス違反は、自社のブランドイメージを低下させるだけではなく、最悪の場合企業が倒産に追い込まれる危険性もある重要な問題です。
今回は、過去の違反事例をベースに、社内のコンプライアンスを高めるための取り組みについてご紹介します。
コンプライアンス(法令遵守)の重要性
コンプライアンス(compliance)は、「法令遵守」と訳されることが一般的ですが、法令はもちろんのこと企業倫理や社会的規範といった社会的なルール、就業規則や社内規定などの社内ルールの遵守もコンプライアンスに該当します
つまり法令として禁じられていなくても、社会的な観点から問題がある行為はコンプラアンス違反になります。
たった一人のコンプライアンス違反が、会社に致命的な打撃を与える可能性もあります。そのため、コンプライアンスは会社の一部の社員だけではなく、全社員が理解しておく必要があります。
リスクマネジメントいう観点からも、全社員を対象としたコンプライアンス教育が不可欠です。
3つのコンプライアンス違反事例
事例1:大手電機メーカーの談合問題
日本のある大手電機メーカーは、公共工事に関する談合問題で大きな注目を浴びました。この企業は、他の複数の企業と共謀して入札価格を事前に調整し、特定の企業が受注できるように操作していました。これにより、競争が阻害され、税金が無駄に使われる結果となりました。
この談合問題が発覚したのは、内部告発がきっかけでした。内部告発者は、リスクを承知の上で不正行為を明らかにし、結果として企業は罰金を課され、関与した役員や社員は処分を受けました。
この事件は、企業内での倫理教育の重要性を再認識させ、企業の透明性とガバナンスの強化が求められるきっかけとなりました。
事例2:製薬会社のデータ改ざん
ある製薬会社は、薬の臨床試験データを改ざんしていたことが発覚しました。この企業は、自社製品の有効性を高く見せるために、実際の試験結果を操作し、ポジティブなデータのみを公表していました。
この改ざんにより、多くの患者が効果のない薬を服用し、健康被害を受ける可能性がありました。
この不正行為が明るみに出たのは、外部の監査機関による調査がきっかけでした。監査機関はデータの不自然さに気付き、詳細な調査を行った結果、改ざんが判明しました。
この事例は、医薬品の安全性と信頼性を確保するための厳格な監査と検証の必要性を示しています。また、企業はこの事件を受けて、データ管理の透明性を確保し、再発防止のための体制を整えました。
事例3:食品メーカーの偽装表示
日本の有名な食品メーカーは、製品の原材料について偽装表示を行っていたことが明らかになりました。この企業は、高級食材を使用していると偽って表示し、実際には安価な代替品を使用していました。この偽装は消費者の信頼を大きく損ない、企業のブランドイメージに深刻なダメージを与えました。
偽装表示の発覚は、消費者団体の調査が契機となりました。消費者団体は製品の成分を独自に分析し、表示内容と実際の原材料が一致しないことを突き止めました。この事例は、消費者の信頼を裏切る行為がどれほどの影響を及ぼすかを示しています。
企業はこの事件を機に、表示の正確性を確保するための厳格なチェック体制を導入し、再発防止に努めました。
以上の事例からわかるように、自社のブランドイメージを大きく毀損しかねないコンプライアンス違反ですが、目先の売り上げなどの目標達成や個人的利益のため、社員が不正を働いてしまうことがあります。
コンプライアンス対策は、リスクマネジメントの1つとしてとらえることが可能です。コンプライアンス上のリスクを分析して重点課題を抽出し、優先度の高いリスクから対応するようにしましょう。
なお、対外的な問題だけではなく、未払い残業代やパワハラ・セクハラなどの労務管理といった社内の問題もコンプライアンスに含まれます。
コンプライアンス違反をなくすための3つのポイント
1. 内部統制の強化
企業内部の統制システムを強化することは、コンプライアンス違反を防ぐための第一歩です。これには、業務プロセスの透明性を確保し、不正行為を検出するための監査体制の整備が含まれます。
定期的な内部監査や外部監査を実施し、従業員が遵守すべきガイドラインやポリシーを明確にすることが重要です。
2. 徹底した倫理教育
従業員に対する徹底した倫理教育は、コンプライアンス意識を高めるための鍵となります。企業は、法令遵守と倫理的行動の必要性を社員に深く理解させるために、定期的な研修やセミナーを実施する必要があります。
この教育プログラムは、実際の事例やシミュレーションを用いて、具体的な状況での判断力を養うことを目的とします。
倫理教育の効果を高めるために、次の点に注力することが重要です:
- 継続的な研修: 一度の教育ではなく、定期的かつ継続的な研修を行うことで、コンプライアンス意識を持続的に高める。
- 実践的なシナリオ: 実際の業務に即したシナリオを使って、従業員が直面する可能性のあるコンプライアンス上の課題を体験的に学ぶ。
- 全社的な取り組み: 役員から新入社員まで全ての階層の従業員が参加することで、企業全体のコンプライアンス文化を醸成する。
3. 内部告発制度の整備
内部告発制度を整備し、従業員が安心して不正行為を報告できる環境を作ることが重要です。匿名での通報が可能なホットラインや、報告者を保護するための制度を設けることで、不正行為の早期発見と是正が可能になります。
内部告発制度は企業の透明性を高め、コンプライアンス文化の定着に寄与します。
信用を築くためには長い時間がかかりますが、失うときは一瞬です。コンプライアンス違反で信用を失った場合、信用を取り戻すことは容易ではありません。
従業員に対するコンプライアンスの重要性の周知や社内規定の改定など、全社一丸でコンプライアンスに取り組みましょう。