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12月 3, 2025
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【2026年4月施行】男女賃金格差の開示義務も!女性活躍推進法改正

女性活躍の更なる推進に向けて、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」が令和7年6月11日に改正され、令和8年4月1日から施行されます。

今回の改正で注目すべきは、男女間の賃金差異と女性管理職比率の公表義務の拡大です。従来は従業員301人以上の企業が対象でしたが、改正後は101人以上の企業に義務が拡大されます。

つまり、中堅企業や地方企業も例外ではなく、より広範な企業が対応を迫られることになります。

法改正は単なるコンプライアンス対応にとどまらず、企業の持続的成長に不可欠な要素です。改正の背景、具体的な改正内容と注意点を整理します。

1.情報開示義務の概要と背景

1-1.概要と背景

急速な少子高齢化や社会の多様化に対応し、男女の人権を尊重した豊かで活力ある社会を築く必要性を背景に、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」が平成27年に制定されました。

この法律は、女性が自らの意思で職業生活を営み、その個性と能力を十分に発揮できる社会を実現するために、国・地方公共団体・事業主に課せられる責務や基本方針を定めています。

この法律によって、女性の活躍推進に向けた数値目標を盛り込んだ行動計画の策定・公表や、求職者に資する情報公表を行うことが事業主(国や地方公共団体、民間企業等)に義務付けられました。

男女賃金格差や、女性管理職比率の開示義務は、企業における男女間の賃金差を「見える化」し、格差の要因分析と是正を促すことで、性別に関係なく能力を発揮できる公平な雇用環境を整備し、女性の活躍と企業価値の向上を図ることを目的としています

 

1-2.世界から見た日本の男女格差

義務化の背景には、日本の男女格差が国際的に見て大きいという現状があります。

OECDの調査によると、2023年時点で、フルタイム勤務の男性賃金を100とした場合の男女賃金格差(男性の平均収入と女性の平均収入の差)はOECD加盟国の平均が11%であるのに対し、日本は22%であり、加盟国の中でも低水準です。

引用:OECD ( https://www.oecd.org/) Gender wage gap 2025年11月現在

また、ILOの調査によると、日本の女性管理職比率は16.3%(2024年)であり、韓国17.5%よりも低く、アメリカ(42.9% 2024年)イギリス(40.9% 2024年)ドイツ(29.1 2024年)と比較してもかなり低い水準となっています。

政府が掲げた目標は30%ですが、2014年からの伸び率は5%足らずにとどまっており、目標達成のためには更なる推進策が必要である、という点も、改正の背景にあるといえます。

 

2.女性活躍推進法改正の具体的内容

2-1 改正後の公表義務のポイント

主な改正ポイントは従業員数101人以上の企業は、「男女間賃金差異」及び「女性管理職比率」の情報公表が義務となる点です。

引用:厚生労働省:ハラスメント対策・女性活躍推進に関する改正ポイントのご案内

 具体的な情報公表の必須項目の条件は以下の通りです (クリックで拡大します)

 厚生労働省リーフレットをもとに作成 

  • 公表方法
  • 施行日と適用タイミング:
    • 施行日:202641
    • 施行後に最初に終了する事業年度の実績を、その次の事業年度の開始後おおむね3か月以内に公表する必要がある 

2-2.注意点

100名以下の企業は対象?

常時雇用する労働者が101人以上の企業が対象であり、100名以下の企業は努力義務となります。

社員とパートはわけるのか?

「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」の区分での公表が必要です。

引用:厚生労働省「女性活躍推進法に関する制度改正のお知らせ」(2022年)

「管理職」の定義は?

「管理職」とは、「課長級」と「課長級より上位の役職(役員を除く)」にある労働者の合計をいいます。

「課長級」とは、以下のいずれかに該当する者です。

  • 事業所で通常「課長」と呼ばれている者であって、2係以上の組織からなり、若しくは、その構成員が10人以上(課長含む)の長
  • 同一事業所において、課長の他に、呼称、構成員に関係なく、その職務の内容及び責任の程度が「課長級」に相当する者(ただし、一番下の職階ではないこと)
 なお、一般的に「課長代理」、「課長補佐」と呼ばれている者は、上記の組織の長やそれに相当する者とはみなされません。


有価証券報告書に記載すれば、情報を公表したことになるか?

「男女の賃金の差異」を含む女性活躍推進法に基づく情報公表項目について、有価証券報告書のみにおいて公表しても、女性活躍推進法の義務を果たしたことにはなりません。

一般の求職者等から見て、男女の賃金の差異の情報がどこに掲載されているのかがわかるように「女性の活躍推進企業データベース」や自社のホームページ等で情報公表をすることが求められています。

法令に違反した場合、罰則はあるのか?

女性活躍推進法において、「男女の賃金の差異」の情報公表に関し、虚偽の公表をした場合や、報告義務対象となっている一般事業主が公表しなかった場合、労働局から報告を求められたり、助言、指導、勧告を受けます。

この勧告等を受けた事業主がこれに従わなかったときは、その旨が公表される場合があります。

また、情報公表を行わなかったことそのものに関する罰則はありませんが、労働局から求められた報告をせず、又は虚偽の報告をした場合は20万円以下の過料が科される可能性があります。

 

3.その他の改正点  

3-1. 法の有効期限が2036年3月末まで延長

従来は2026年3月末までの時限法でしたが、今回の改正で10年間延長されました。これは、女性活躍推進を一過性の取り組みではなく、長期的な経営課題として位置づけるという政府の強い意思を示しています。

企業は、短期対応ではなく、中長期の人材戦略や制度設計に組み込む必要があります。

 

3-2. 女性の健康課題(月経・更年期・不妊治療など)への配慮を基本原則に追加

女性特有の健康課題は、キャリア継続に大きな影響を与える要因です。今回の改正では、企業に対し、こうした課題への理解と配慮を求める姿勢が明確化されました。

例えば、柔軟な勤務制度や相談窓口の設置、休暇制度の整備などが考えられます。健康課題への対応は、離職防止やエンゲージメント向上に直結するため、企業の競争力強化にもつながります。


3-3. 「プラチナえるぼし」認定要件にセクハラ防止措置の公表を追加

「えるぼし」認定は、女性活躍推進に積極的な企業を評価する制度で、採用活動や企業ブランド向上に有効です。

今回の改正で、認定要件にセクハラ防止措置の公表が追加され、認定取得を目指す企業は、より高度なコンプライアンス対応が求められます。

 

4.まとめ

この制度改正への対応は、単なる法令遵守にとどまらず、企業の透明性や信頼性を高める取り組みとして注目されています。正しい情報を公表することで、採用における競争力の強化にもつながります。

今後は、対象企業の範囲がさらに拡大される可能性もあり、中堅企業にとっても早めの準備が重要です。

また、情報を公表するためには、人事データ管理がきちんと行われていることが重要です。人事システムを利用することで、必要な情報を正しく管理し、スムーズに抽出、活用することが可能です。

 

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5.参考文献

OECD Data Explorer ( https://www.oecd.org/
ILO Data Explorer(https://www.ilo.org/)
厚生労働省 ハラスメント対策・女性活躍推進 に関する改正ポイントのご案内
厚生労働省 「女性活躍推進法に関する制度改正のお知らせ」(2022年)
厚生労働省 女性活躍推進法特集ページ 
厚生労働省 女性活躍推進法に基づく「男女の賃金の差異」の公表等における 解釈事項について (法第 20 条・省令第 19 条等関係)

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