2026年は、社会保険や障害者雇用、ハラスメント対策など、人事・労務に関わる制度変更が相次いでいます。
法改正の影響は、就業規則や勤怠・給与システムの変更、相談体制の構築、社内周知など多岐にわたります。
すでに施行された改正、2026年下半期に対応が必要な改正、2027年以降を見据えて準備したい制度を区分して確認することで、自社に必要な対応を整理しやすくなります。
特に2026年10月1日には、カスタマーハラスメント対策やパート・有期雇用労働法の改正など複数の制度が同時に施行されます。施行日まで残り期間が限られているため、下半期の対応は優先順位をつけて進める必要があります。
この記事では、2026年9月時点の主な人事労務関連の法改正について、社労士の視点から、制度の概要と実務上の確認事項を解説します。
※本記事は2026年9月時点の情報をもとに作成しています。施行日や制度の詳細については、最新の法令や行政機関の公表資料をご確認ください。
社労士執筆・監修
フォスターリンク株式会社
2000年の創業以来、700社以上の人事支援を手がける人事のベストパートナー。社会保険労務士の資格を持つ担当者が、実務知見をもとに本記事を執筆・監修しています。
2026年の人事労務法改正スケジュール
2026年の主な法改正を、「施行済み」「2026年下半期に対応」「今後の準備」の3つに分けて整理します。自社が優先して確認すべき項目を、以下の一覧からご確認ください。
| 対応区分 | 時期 | 主な改正点 | 企業が確認すること |
|---|---|---|---|
| 施行済み | 2026年4月 | 在職老齢年金制度の見直し | 高齢者雇用制度、賃金設計、対象者への説明 |
| 施行済み | 2026年4月 | 女性活躍推進法の改正 | 公表項目、算出基準、情報公表の運用 |
| 施行済み | 2026年度 | 子ども・子育て支援金制度 | 給与計算、保険料控除、従業員への説明 |
| 施行済み | 2026年7月 | 障害者法定雇用率2.7%への引き上げ | 雇用義務の対象、雇用人数、採用・定着計画 |
| 下半期対応 | 2026年10月 | カスタマーハラスメント対策の義務化 | 方針、相談窓口、対応手順、研修 |
| 下半期対応 | 2026年10月 | 求職者等へのセクシュアルハラスメント対策の義務化 | 採用活動上のルール、相談体制、担当者教育 |
| 下半期対応 | 2026年10月 | パート・有期雇用労働法の改正(同一労働同一賃金の実効性強化) | 労働条件通知書の様式、待遇差の説明体制、賞与・手当の支給基準 |
| 下半期対応 | 2026~2027年 | 労働安全衛生法・作業環境測定法の改正 | 自社に関係する施行日と対応項目 |
| 今後の準備 | 検討中 | 労働時間・休日制度などの見直し | 就業規則、勤怠設定、運用体制の確認 |
| 今後の準備 | 2027年以降 | 社会保険適用拡大、標準報酬月額上限の引き上げ | 対象者、人件費、給与計算への影響 |
以降では、この3つの区分に沿って、各制度の概要と実務上の確認事項を解説します。施行済みの制度は対応状況、下半期に施行される制度は準備の進捗、今後の制度改正は影響範囲を確認する視点でご覧ください。
第1部|すでに施行された法改正
2026年4月・7月に施行された制度を取り上げます。社内規程、給与計算、人事データ、採用計画などへの反映状況をご確認ください。
年金・女性活躍・子育て支援金
1.在職老齢年金制度の見直し
施行日:2026年4月1日
対象:働きながら老齢厚生年金を受給する60歳以上の従業員
主な対応:対象者への説明と再雇用・賃金設計の確認
2026年4月1日から、在職老齢年金の支給停止基準額が引き上げられました。
在職老齢年金は、厚生年金に加入しながら働く60歳以上の人について、賃金と老齢厚生年金の合計額が一定の基準を超えた場合に、年金額の一部または全部が支給停止となる制度です。
基準額の引き上げによって、高齢者が働きながら年金を受け取りやすくなり、就業時間や働き方の選択にも影響する可能性があります。
実務で確認すること
企業では、制度改正を対象者へ伝えるだけでなく、再雇用制度や高齢社員の賃金設計との整合性を確認する必要があります。
特に、65歳以降の短時間勤務制度や再雇用後の賃金テーブルを設けている企業では、制度改正を踏まえて現在の設計が適切かを検討しましょう。
対象者へ説明する際は、給与額だけでなく、社会保険料や年金受給への影響を含めて整理することが重要です。
2.女性活躍推進法の改正
施行日:2026年4月1日
対象:常時雇用する労働者が101人以上の企業
主な対応:公表項目・算出基準・承認手順の整備
2026年4月1日から、常時雇用する労働者が101人以上の企業について、男女間賃金差異と女性管理職比率の公表が義務化されました。
情報を公表するためには、人事データから数値を抽出するだけでなく、どの従業員を集計対象とするか、管理職をどのように定義するかを明確にする必要があります。
実務で確認すること
次の点を社内で統一しておきましょう。
- ●正規雇用労働者と非正規雇用労働者の区分
- ●管理職の定義
- ●男女間賃金差異の算出方法
- ●人事システムから必要なデータを抽出する手順
- ●公表内容を確認、承認する責任者
- ●数値に差が生じている場合の社内説明
公表する数値は、採用活動や企業評価にも影響します。単なる法令対応として扱うのではなく、採用、配置、昇進、育成などの人事施策と合わせて分析することが大切です。
3.子ども・子育て支援金制度の開始
施行日:2026年度
対象:医療保険の加入者と事業主
主な対応:料率・給与控除・明細表示・社内説明の確認
子ども・子育て支援金制度は、少子化対策の財源を確保するため、医療保険料とあわせて支援金を徴収する制度です。
従業員の給与から控除する金額や企業負担への影響は、加入する医療保険や従業員の報酬などによって異なります。
実務で確認すること
給与計算を担当する部門では、次の対応が必要です。
- ●加入する健康保険の支援金率を確認する
- ●給与計算システムの料率や控除設定を更新する
- ●初回控除時の計算結果を検算する
- ●給与明細の表示内容を確認する
- ●従業員向けの説明を準備する
- ●企業負担分を予算へ反映する
制度が新設された年度は、設定そのものが正しくても、給与明細への表示や従業員への説明が不足することがあります。給与計算、経理、人事の間で役割を分け、誰が設定し、誰が検算し、誰が問い合わせに対応するかを決めておきましょう。
法改正に伴う給与設定や計算業務を見直したい方へ
社会保険料率や控除制度の変更を含め、給与計算業務を継続的かつ安定的に運用する仕組みをご紹介しています。 「HR-Platform 給与計算代行」 の資料をご確認ください。
障害者法定雇用率
施行日:2026年7月1日
対象:常時雇用する労働者が37.5人以上の事業主
主な対応:雇用人数の確認と採用・定着計画の見直し
2026年7月1日から、民間企業の障害者法定雇用率が2.5%から2.7%へ引き上げられました。
これに伴い、障害者を1人以上雇用する義務が生じる事業主の範囲も、常時雇用する労働者40人以上から37.5人以上へ広がっています。
これまで障害者雇用義務の対象外だった企業でも、従業員数によっては新たに対象となる可能性があります。
実務で確認すること
まず、常時雇用する労働者数と障害者雇用人数を確認し、法定雇用率を満たしているかを計算します。
ただし、障害者雇用への対応は、必要な人数を採用すれば終わるものではありません。採用後に継続して働けるよう、業務の切り出し、職場環境の整備、上司や同僚への説明、相談体制の構築も必要です。
法定雇用率を満たしていない企業は、次の点を整理しましょう。
- ●現在の雇用人数と不足人数
- ●採用可能な職種や業務
- ●勤務時間や勤務場所の選択肢
- ●職場設備や業務手順で必要な配慮
- ●採用後の支援担当者
- ●外部の支援機関との連携方法
採用計画だけで対応するのではなく、既存業務の見直しや定着支援まで含めた中期的な計画を立てることが重要です。
第2部|2026年下半期に対応が必要な法改正
2026年10月の施行や段階施行に向けて、下半期に準備を進めたい制度を解説します。社内方針、相談体制、担当者教育など、事前の整備が必要な項目が中心です。
ハラスメント対策の義務化
2026年後半に特に対応を急ぐ必要があるのが、カスタマーハラスメントと求職者等へのセクシュアルハラスメントへの対策です。
2026年10月1日から、すべての事業主に対して、カスタマーハラスメントと求職者等へのセクシュアルハラスメントを防止するための措置が義務付けられます。
1.カスタマーハラスメント対策
施行日:2026年10月1日
対象:すべての事業主
主な対応:方針・相談窓口・判断基準・対応手順・研修の整備
カスタマーハラスメントは、顧客や取引先などの言動のうち、業務の性質などに照らして社会通念上許容される範囲を超え、労働者の就業環境を害するものを指します。
暴行や脅迫、暴言だけでなく、過度な要求、長時間の拘束、繰り返される執拗な連絡なども対象となる可能性があります。
一方で、顧客からの正当な意見や苦情まで一律にカスタマーハラスメントとして扱うことはできません。現場の担当者だけに判断を委ねず、会社として判断基準と対応手順を整える必要があります。
実務で確認すること
企業に求められる対応には、主に次のようなものがあります。
- ●カスタマーハラスメントを許容しない方針の明確化
- ●カスタマーハラスメントに該当する言動の整理
- ●従業員が相談できる窓口の設置
- ●相談を受けた後の事実確認と対応手順の整備
- ●被害を受けた従業員への配慮
- ●再発防止策の実施
- ●相談者や関係者のプライバシー保護
- ●顧客対応を担当する従業員や管理職への研修
特に重要なのは、現場の担当者に「適切に対応すること」だけを求めないことです。
どの段階で上司へ報告するのか、対応を打ち切る判断を誰が行うのか、警察や弁護士などの外部機関へつなぐ基準は何かを、事前に決めておく必要があります。
2.求職者等へのセクシュアルハラスメント対策
施行日:2026年10月1日
対象:すべての事業主
主な対応:採用活動のルール・相談体制・担当者教育の整備
2026年10月1日からは、採用面接やインターンシップなどにおける、求職者等へのセクシュアルハラスメント対策も義務化されます。
対象は、採用面接を受ける人だけではありません。インターンシップ参加者、内定者、採用イベントへの参加者なども含め、採用活動に関係する幅広い場面を想定する必要があります。
実務で確認すること
企業では、次のような対応を進めましょう。
- ●採用活動における禁止事項の明確化
- ●面接官や採用担当者向けの行動ルールの整備
- ●インターンシップや懇親会を含む対応範囲の確認
- ●求職者が利用できる相談窓口の設置
- ●相談があった場合の事実確認と対応手順の整備
- ●面接官、役員、現場担当者への研修
- ●採用を委託している会社との責任範囲の確認
採用活動では、現場社員や管理職が面接、会社説明会、座談会などに参加することがあります。人事部門だけでなく、採用に関わる可能性のある従業員までルールを周知することが重要です。
同一労働同一賃金の実効性強化(パート・有期雇用労働法の改正)
施行日:2026年10月1日
対象:パートタイム・有期雇用労働者を雇用するすべての事業主
主な対応:労働条件通知書の様式見直し、待遇差を説明できる体制の整備、支給基準の点検
2026年10月1日から、パートタイム・有期雇用労働法の施行規則と関係する告示・指針が改正されます。正社員とパート・有期雇用労働者との不合理な待遇差の解消(同一労働同一賃金)をさらに進めるための改正で、カスタマーハラスメント対策と同じ10月1日に施行されます。
改正の柱は、①雇い入れ時の労働条件明示事項の追加、②同一労働同一賃金ガイドラインの見直し、③雇用管理指針の見直しの3つです。特に①では、これまでの明示事項(昇給・賞与・退職手当の有無、相談窓口)に加えて、正社員との「待遇の相違の内容や理由について説明を求めることができる」旨を、労働条件通知書などに明示することが義務付けられます。この明示義務に違反した場合は、10万円以下の過料の対象となります。
実務で確認すること
様式の文言を追加するだけでなく、実際に待遇差を説明できる状態を整えておくことが重要です。
- ●労働条件通知書・雇用契約書に「待遇差の内容・理由の説明を求められる」旨を追記する
- ●雇入れ時だけでなく、労働契約の更新時に使う様式も見直す
- ●正社員とパート・有期雇用労働者の待遇差の内容と理由を整理する
- ●賞与・退職手当・各種手当の支給基準を、説明できる形で確認する
- ●待遇差の説明を求められた際の窓口と対応手順を決める
- ●改正後の同一労働同一賃金ガイドライン・雇用管理指針の内容を確認する
労働条件通知書の様式変更は、パート・有期雇用労働者を採用・契約更新するすべての企業に関わります。カスタマーハラスメント対策と同じ10月1日施行のため、あわせて準備を進めておくと対応漏れを防ぎやすくなります。
労働安全衛生法・作業環境測定法の改正
2025年に成立した改正労働安全衛生法・作業環境測定法は、2026年から2027年にかけて段階的に施行されます。
改正内容には、個人事業者等を含む安全衛生対策の拡充、化学物質対策の強化、機械等による労働災害防止の促進などが含まれます。
業種や業務内容によって影響が大きく異なるため、すべての改正項目を一律に対応するのではなく、自社に関係する項目と施行日を整理する必要があります。
1.個人事業者等への安全衛生対策の拡充
業務を個人事業者やフリーランスへ委託している企業では、契約関係だけでなく、作業現場における安全衛生上の責任も確認する必要があります。
契約書の安全衛生条項、作業前の教育、事故発生時の連絡体制などを見直しましょう。
2.化学物質対策の強化
化学物質を取り扱う企業では、危険性や有害性に関する情報管理、ばく露測定、作業環境の管理などが必要です。
人事・労務部門だけで対応せず、安全衛生担当者、現場責任者、産業医、外部専門機関との役割分担を明確にすることが重要です。
3.機械等による労働災害防止の促進
機械設備を使用する企業では、検査の対象や実施方法、記録の保存状況などを確認します。
法改正への対応を単発の点検で終わらせず、年間の安全衛生計画や設備保全計画に組み込みましょう。
第3部|今後に向けて準備したい制度改正
現在議論されている制度や、2027年以降に施行予定の改正を取り上げます。現時点での設定変更ではなく、対象者、人件費、規程やシステムへの影響を把握しておくための項目です。
今後の労基法改正で議論されている論点
労働時間や休日に関する制度については、労働政策審議会などで見直しの議論が続いています。もっとも、2026年の通常国会への労働基準法改正案の提出は見送られました。さらに、2025年に発足した高市政権が労働時間規制の緩和も含めた検討を求めたことで、見直しの方向性自体が流動的になっています。以下に挙げる論点は、これまでの研究会報告書で示された内容が中心ですが、今後の議論で方向が変わる可能性がある点に留意してください。
※現時点では、すべての内容について改正法の成立や施行日が確定しているわけではありません。以下では、確定した制度と審議中の論点を分けて記載しています。
主に議論されているテーマには、次のようなものがあります。
- ●労働時間規制の見直し
- ●法定休日の特定
- ●連続勤務を抑制する仕組み
- ●勤務間インターバル制度
- ●副業・兼業時の労働時間管理
- ●年次有給休暇取得時の賃金算定
- ●労働時間の情報開示
これらは検討中の事項を含みますが、将来の改正を待たなければ何もできないわけではありません。
むしろ、現在の勤怠管理に次のような問題がある場合は、早めに見直す必要があります。
- ●法定休日をシステム上で明確に管理できていない
- ●連続勤務日数を把握できていない
- ●終業から翌日の始業までの休息時間を確認できない
- ●副業や兼業の申告ルールが定まっていない
- ●振休と代休の運用が部署ごとに異なる
- ●勤怠データを給与計算前に手作業で加工している
- ●制度変更時に誰が勤怠設定を変更するか決まっていない
法改正が確定してから対応を始めると、就業規則、労使協定、勤怠システム、給与計算、現場運用を同時に変更しなければならない可能性があります。
今の段階では、制度の改正を前提に設定を変更するのではなく、現在の規程と運用、システム設定が一致しているかを確認しておくことが重要です。
今後の労基法改正に備え、勤怠システムで確認すべきポイントを整理
法定休日や労働時間管理など、制度変更によって影響を受ける可能性がある勤怠設定を、コンサルタントの視点から解説しています。 「労基法大改正 明日から備えるシステム対応とは」 をご活用ください。
2027年以降の制度改正
2026年中に施行される制度だけでなく、2027年以降の変更についても、人件費やシステム改修への影響が大きいものは早めに準備する必要があります。
1.短時間労働者の社会保険適用拡大
短時間労働者への社会保険の適用については、企業規模要件の段階的な縮小・撤廃や、賃金要件の撤廃が予定されています。
企業規模要件は2027年10月以降、段階的に縮小され、最終的には撤廃される予定です。
今後、これまで社会保険の加入対象ではなかった短時間労働者が、対象となる可能性があります。
実務で確認すること
企業では、現在の対象者だけでなく、将来加入対象となる可能性のある従業員数を把握しておきましょう。
- ●週の所定労働時間
- ●雇用期間の見込み
- ●学生に該当するか
- ●雇用契約上の勤務時間と実際の勤務時間
- ●新たに発生する社会保険料の企業負担
- ●加入によって働き方を変更する従業員の有無
社会保険の適用拡大は、人件費の増加だけでなく、採用条件やシフト編成にも影響します。人事部門と経営層、現場部門が早い段階から影響を共有することが重要です。
2.雇用保険制度の適用拡大
施行日:2028年10月1日
対象:週の所定労働時間が10時間以上の労働者
主な対応:対象者数・保険料・システム登録方法の確認
2028年10月1日から、雇用保険の加入要件となる週の所定労働時間が、週20時間以上から週10時間以上へ拡大されます。
短時間勤務者を多く雇用する企業では、加入対象者が大きく増える可能性があります。
対象者数の把握、雇用保険料の試算、従業員情報の整備、給与計算システムへの登録方法を確認しておきましょう。
3.標準報酬月額上限の段階的引き上げ
厚生年金保険料や年金額の計算に使用される標準報酬月額の上限は、段階的に引き上げられる予定です。
| 改定時期 | 標準報酬月額の上限 |
|---|---|
| 2027年9月 | 68万円 |
| 2028年9月 | 71万円 |
| 2029年9月 | 75万円 |
高所得層の従業員について、本人負担と企業負担の双方が増加する可能性があります。
対象者数と企業負担額を試算し、予算や人件費計画へ反映しましょう。給与計算システムについても、改定時期に正しい等級が適用されるかを確認する必要があります。
4.ストレスチェック義務の対象拡大
50人未満の事業場に対するストレスチェックの義務化については、施行日に注意が必要です。
※2026年4月から直ちにすべての事業場が対象となったわけではありません。具体的な施行時期や経過措置を確認したうえで、実施体制を検討してください。
小規模な事業場では、実施者の選任、外部機関への委託、個人情報の管理、面接指導への対応などが課題になりやすいため、施行直前ではなく早めに運用方法を検討しましょう。
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法改正による給与計算への影響や、今後の社会保険適用拡大について詳しく確認したい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
2026年後半に人事労務部門が確認したいチェックリスト
2026年後半の法改正対応について、自社の状況を確認してみましょう。
2026年後半の法改正対応チェック
□2026年4月以降の制度変更を社内規程や運用へ反映した
□在職老齢年金の改正について対象者へ案内した
□男女間賃金差異と女性管理職比率の算出方法を統一した
□子ども・子育て支援金の給与計算設定を検算した
□障害者法定雇用率2.7%を基準に雇用状況を確認した
□カスタマーハラスメントに関する会社方針を整備した
□カスタマーハラスメントの相談窓口と対応手順を決めた
□採用活動におけるセクシュアルハラスメント対策を整備した
□パート・有期雇用労働者の労働条件通知書に「待遇差の説明を求められる」旨を追記した
□面接官や現場担当者への研修を実施した
□自社に関係する労働安全衛生法の施行日を確認した
□就業規則と勤怠システムの設定が一致している
□社会保険適用拡大による将来の対象者数を把握した
□法改正時の担当者とシステム変更の責任者を決めた
確認できない項目が複数ある場合、個別の法改正だけでなく、規程、業務フロー、システム設定を横断して見直す必要があります。
法改正にも対応できる勤怠管理の基礎を一冊で確認
労働時間、休憩、休日、振休・代休など、勤怠管理で判断に迷いやすいポイントと運用設計の考え方を整理しています。 「勤怠管理の教科書―判断と運用設計のためのガイド」 をご活用ください。
法改正対応は規程・業務・システムを一体で見直す
人事労務の法改正では、制度の内容を理解するだけでなく、実際の業務へ反映することが重要です。
例えば、労働時間制度が変わる場合には、就業規則を改定するだけでなく、勤怠システムの集計条件、申請・承認フロー、給与計算との連携、従業員への説明まで見直さなければなりません。
社会保険制度が変わる場合も、対象者の判定、従業員情報の更新、給与控除、企業負担額の計算、給与明細の表示など、複数の業務に影響します。
法改正対応を進める際は、次の順番で整理すると対応漏れを防ぎやすくなります。
- 自社が改正の対象になるか確認する
- 影響を受ける規程や社内ルールを特定する
- 対象となる従業員を抽出する
- 勤怠・給与・人事システムへの影響を確認する
- 担当者と責任者を決める
- 設定変更後のテストと検算を行う
- 管理職や従業員へ周知する
- 施行後の運用状況を確認する
法改正ごとに個別対応を繰り返すだけでは、人事部門の負担が増え、設定や運用が複雑になります。
2026年後半は、目の前の改正に対応すると同時に、今後も制度変更へ対応できる体制になっているかを見直す機会と捉えることが大切です。
まとめ|2026年後半は対応漏れの確認と10月施行への準備を
2026年後半に向けて、企業が優先して確認したいのは、次の3点です。
第一に、4月から7月に施行された制度が、規程、給与計算、人事データ、採用計画などへ正しく反映されているかを確認します。
第二に、2026年10月1日に施行される、カスタマーハラスメント対策、求職者等へのセクシュアルハラスメント対策、そしてパート・有期雇用労働法の改正(同一労働同一賃金)への対応を進めます。ハラスメント対策では方針の公表だけでなく相談窓口・判断基準・対応フロー・研修まで、パート・有期雇用労働法の改正では労働条件通知書の見直しと待遇差を説明できる体制の整備まで必要です。
第三に、社会保険適用拡大や労働時間制度の見直しなど、2027年以降の変更を見据えて、就業規則、勤怠管理、給与計算の現状を確認します。
法改正への対応は、人事担当者だけで完結するものではありません。経営層、現場管理職、経理、情報システム部門、社会保険労務士や外部支援会社などと役割を分担し、継続的に対応できる体制を整えることが重要です。
法改正対応を進めるための参考資料
労働時間・休日・勤怠設定の見直しに役立つ、社労士監修のガイドです。
今後の制度変更に備えたい方は、労基法改正の解説資料もご覧いただけます。
給与計算や設定を見直したい方は、給与計算代行の資料をご確認ください。
参考文献
本記事は、以下の官公庁が公表する資料をもとに作成しています(2026年9月時点)。制度の詳細や最新の施行日は、各資料の原文をご確認ください。
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」(在職老齢年金の見直し/標準報酬月額上限の引き上げ/被用者保険・雇用保険の適用拡大)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00017.html - 厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ」(男女間賃金差異・女性管理職比率の情報公表)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html - こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001228302.pdf - 厚生労働省「事業主の方へ(障害者雇用)」(法定雇用率2.7%への引き上げ)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page10.html - 厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号/カスタマーハラスメント防止指針)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf - 厚生労働省「事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第52号/求職者等セクシュアルハラスメント防止指針)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662589.pdf - 厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」/同 Webマガジン「2026年10月からパートタイム・有期雇用のルールが変わります」(パート・有期雇用労働法の改正)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html
https://www.mhlw.go.jp/web_magazine/column/20260803.html - 厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律について」(2025年5月14日公布・段階施行/ストレスチェックの50人未満事業場への拡大等)
- 厚生労働省「労働基準関係法制研究会 報告書」(2025年1月公表)
