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4月 25, 2025
4 min read time

上司代行とは?次世代リーダーシップ開発の必要性について考察

近年、働き方の多様化や人材の流動化が進む中で、「上司代行」という概念が注目を集めています。
上司代行とは、その名の通り、上司の不在時に代わって業務遂行やチームマネジメントを行う役割です。特に、急な退職や長期休暇、あるいは管理職の過重負担の軽減を目的として導入されることが多く、組織の安定運営を支える手段として一定の効果を上げています。

しかしながら、上司代行の運用には限界もあります。
代行者の負担増加やリーダーシップの分散、意思決定の遅れなど、長期的な視点で見たときに新たな課題が生じることも少なくありません。

そこで本稿では、「上司代行とは何か?」という基本に立ち返りつつ、真に持続可能な組織運営を実現するために必要な「次世代リーダーの開発」について考察していきます。

上司代行とは何か?

「上司代行」とは、通常のラインマネージャーや直属の上司の業務や役割を一時的または部分的に代替する仕組みや人材を指します。これは育児・介護・長期出張などで上司が不在となった場合に、現場のマネジメント機能を維持するために導入されるケースが見られます。

また最近では、メンタリングやピープルマネジメントを外部委託する新しい形の代行も広がりを見せており、「上司の機能を補完・代替する柔軟な仕組み」としても位置付けられています。

上司代行が行う業務とは

上司代行が行う業務の範囲は部分的なものから包括的なものまで幅があります。
その中でも、代表的な業務には以下のようなものがあります。

業務カテゴリ 業務内容
業務マネジメント ・部門・チームの業務進捗管理
・タスクの優先順位付けと割り当て
・KPIや納期の管理
メンバー管理・育成 ・部下への指示・サポート
・OJTや簡易的なフィードバック
・業務に関する質疑応答対応
労務・勤怠関連の対応 ・部下の勤怠確認や休暇取得状況の把握
・簡単な労務トラブルへの一次対応
心理的安全性の確保 ・チーム内の雰囲気維持・相談対応
・ハラスメント未然防止のための観察と対応
コミュニケーションの橋渡し ・他部署やクライアントとの連絡・調整
・上層部への報告・連携
・会議のファシリテーションや代理出席


権限の委譲範囲は企業や現場の状況によって異なります。
例えば正式な評価権限や戦略的意思決定までは担わないケースが多い傾向が見られます。

一方で、現場の運営継続という観点での裁量は、比較的広く与えられることもあります。
上司代行は臨時代理人ではありますが、単なる作業の肩代わりではなく、現場の心理的・組織的安定を支える役割も大きく期待されます。

上司代行が求められている背景

近年、上司代行のニーズが高まっている背景には、以下のような社会的構造の変化があります。

管理職の負荷増大

デジタル化や業務複雑化により、管理職が担う役割が増えすぎ、現場の育成やマネジメントに十分に時間が割けないという課題が顕在化しています。

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引用:独立行政法人労働政策研究・研修機構調査シリーズNo.212管理職の働き方に関する調査

独立行政法人労働政策研究・研修機構が2020年に行った調査によると、15年前の調査に比べて改善は見られるものの、月190時間以上勤務している管理職は30%強となることがわかります。

リーダー不在の現場増加

少子高齢化の加速だけでなく若手人材のマネジメントへの志向低下や、昇格辞退の増加などによって、リーダーシップポジションが空白になる現象も見られています。

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引用:帝国データバンク 20250318_リーダー人材不足に関する企業の意識調査

帝国データバンクが2025年に行った調査によると、リーダー人材の不足を感じている企業が67.8%。
リーダー人材の不足を「感じている」企業に対して、育成するうえでの課題を尋ねたところ、「リーダー職への意欲」が足りないという回答が59.8%で最も高いという結果となっています。

人材の多様化・柔軟な働き方の浸透

現代の職場では、従業員の属性が以前に比べて格段に多様化しています。
Z世代~シニア層までの多世代共存だけでなく、様々な雇用形態、育児・介護、ワーケーションなど、これまでの画一的なマネジメントが通用しない時代となってきています。

そこで、個々の社員に寄り添い、柔軟にマネジメント機能を補完する役」として、上司代行の仕組みが注目されているのです。

上司代行のメリット

上司代行の導入には以下のようなメリットが期待できます。

現場マネジメントの継続性が保たれる

病気や介護、突発的な退職など、上司が突発的に不在となる状況では特に上司代行のメリットが発揮されます。

上司代行を利用することで、業務の進捗確認や優先順位の調整、緊急時の判断等の対応が継続して可能となります。
特にこれまで属人的にマネジメントが行われていた場合、その影響力は大きいものとなることでしょう。


新任・若手の育成支援

新任社員や若手社員にとって、入社初期は「業務理解」「組織風土の習得」「自己効力感の獲得」が極めて重要です。
上司の支援が薄いと、成長機会を失うだけでなく、早期離職やモチベーション低下のリスクが高まります。

上司代行がこのタイミングで機能することで、若手が一人で業務を抱え込みすぎない伴走的サポートの実現がしやすくなります。また、業務だけでなく、考え方や価値観の背景まで伝える“育成”の時間を確保しやすくなることもメリットとなります。

このように上司代行はメンタリング的な役割で配置されることも多く、人材育成の観点から有効な介在機会を提供します。


リーダー育成の観察機会

上司代行体制を取ることで、リーダーシップポジションの一時的な空白が発生します。
この空白があるからこそ、代行者以外のメンバーが自然にリーダーシップを発揮する機会が生まれます。

このような場面は、組織にとって次世代リーダー候補の観察や評価のチャンスとなります。
実際の上司が行う業務を上司代行に任せつつ、状況に応じて柔軟に行動できる人材の兆しを捉えたり、次世代リーダー候補の行動特性・影響力・思考スタイルを実地で評価できることが重要なメリットです。

上司代行のデメリットや限界

上司代行は、一般的に上司が不在となる一時的な期間において、部下やチームの業務を滞りなく進めるために設けられるポジションです。
あくまで一時的な代役であるため、恒常的なリーダーシップ不足を補う手段とはなり得ません。

組織の本質的な課題は、「上司がいなくても動けるチーム」や「リーダーシップが機能する組織」をいかに構築するかという点にあります。

たとえば、何度も上司代行を導入しているものの、誰も正式な管理職には昇格しない場合、周囲の人材のモチベーション低下や離職リスクが高まります。また、権限が不明確なまま業務を進めることで、チーム内に混乱やストレスが生じる可能性もあります。

このような状況が続けば、いくら代行制度を整備しても、根本的な組織力の向上にはつながりません。
したがって、重要なのは「誰が代行できるか」ではなく、「誰が次のリーダーとして成長していけるか」を見極め、育成していく視点です。

次世代リーダーシップの開発が必要な理由

上述したように、上司代行はあくまで一時的な補完策であり、企業に本当に求められるのは持続可能なリーダーシップの育成です。

特に近年は、価値観の多様化や働き方の変化によって、従来型のトップダウン型マネジメントだけでは対応しきれないケースが増えています。そんな中で求められるのは、共感力やファシリテーションスキルを持ち、メンバーを巻き込みながら成果を出す新しいリーダー像です。

また、次世代リーダーを育てることは、組織内にリーダー候補の層を厚くすることにもつながります。
これにより、急な人事異動や退職といったリスクにも柔軟に対応でき、結果的に上司代行に依存しない強い組織が築かれていきます。

人材開発企業としての取り組み

弊社は20年以上、360度評価や組織サーベイ、各種研修サービスなどを活用し、次世代リーダーの育成と組織の活性化を推進しています。​
これらの取り組みにより、上司不在時のマネジメントの継続性を確保し、若手社員の育成支援やリーダー候補の発掘・評価を実現しています。​

次世代リーダーの育成は、単なる研修や任命ではなく、個々の可能性を見極め、現場での実践を通じて成長を支える継続的なプロセスです。変化の激しい時代だからこそ、組織を未来につなぐリーダーシップの土台づくりが重要となります。

フォスターリンクでは、実践知に基づいた次世代リーダーシップ開発支援や仕組みづくりをご提供しています。
貴社の状況に応じた最適なプログラム設計をお手伝いしますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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参考文献

  • 独立行政法人労働政策研究・研修機構調査シリーズNo.212管理職の働き方に関する調査(2021年)
  • 帝国データバンク 20250318_リーダー人材不足に関する企業の意識調査
  • Harvard Business Review(2021). Why Managers Fail at Developing Leaders.

 

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