中小企業において、人材の適切な評価と効果的な活用は、競争力向上に直結する課題です。
この記事では、中小企業の成長を支える人事評価システムの導入について、その必要性から具体的な機能、選び方のポイントなどを解説します。導入時のトラブルと対処法もご紹介しますので、人事評価システムをご検討中の方はぜひご参考にしてください。
中小企業にこそ人事評価システムが必要な理由
人材確保や、人手不足への対応という観点で、従業員一人ひとりの能力を最大限に活かし、組織全体の生産性を向上させることは、中小企業にとってますます重要になっています。
適切な人事評価制度を設計した上で、それをうまく運用することで、企業の戦略を現場に浸透させたり、 個人の能力開発を促し、結果的として組織全体のパフォーマンス向上につなげることが可能になります。
そういった意味で人事評価の運用は、組織の生産性向上に大きく寄与する要素だと言えます。
一方、人事評価の運用は簡単にできるものでもありません
人事評価には、主に以下のような種類があります。どの評価方法を採用するかは企業によって異なり、職種や等級などによって、複数の方法を併用して評価するケースもあります。
業績評価:従業員の業務遂行の結果や、目標達成度を評価する
行動評価:職務を遂行していくなかで、従業員がとる行動や態度を評価する
情意評価:従業員の意欲や態度、価値観など、感情的な側面を評価する
能力評価:知識および行動力、判断力など業務遂行に必要な力を評価する
いづれの評価方法であっても、多くの場合は、目標の設定、自己評価、評価者による評価、調整と最終評価の決定、評価結果のフィードバック、等級や報酬などへの反映など一連の評価プロセスがあり、それらをスケジュールに合わせて適切な形で運用していく必要があります。
そのため評価運用では、管理者や評価者の時間と手間がかかるケースが多くあります。
もし、それをエクセルや紙ベースで運用管理していると、さまざまな問題が生じます。例えば評価情報や評価プロセスを適切に管理することが難しくなり、それによって評価の見落としや不公平感が生じやすくなります。
また、より多くの管理の手間がかかり、オーナーや管理者の負担も大きくなるため、人事担当者がコア業務に割く時間が減るばかりでなく、評価が形骸化したり、正しい評価が行われないなどの弊害があり、結果的に組織の成長を妨げる要因になりかねません。
人事評価システムを利用することで、管理者や評価者の負担が減るだけでなく、組織全体のパフォーマンス向上につながるのです。
限られたリソースで組織を成長させる必要がある中小企業こそ、人事評価システムの利用が多くのメリットを生みます。
なお、人事評価制度の詳細については、以下の記事も参考にしてみてください。
【関記事連】人事担当が知っておきたい!効果的な人事評価 完全ガイド
人事評価システムの機能と中小企業が導入して得られるメリット
人事評価システムには、評価運用業務を効率的に進めるためのさまざまな機能が備わっています。ここでは代表的な機能と、システムの導入により得られるメリットを紹介します。
目標設定機能
人事評価システムでは、個人や部門別の目標設定と共有を可能にします。達成率も管理していくことにより、成長や成果を効果的に管理・評価していくことができます。
また、MBO(目標管理)の実装もシステム上でおこなえ、個人の目標設定時に、部署や組織などの上位目標もあわせて設定が可能です。これにより、組織全体の目標に向けた取り組みが促進され、個人の成長と組織の成果を効果的に結びつけることにつながります。
評価機能
人事評価システムには、前述したさまざまな評価項目に対して、自己評価・上司評価・多面評価など、あらゆる評価を効率的に実施し、結果を自動集計・可視化できる機能が備わっています。評価履歴を保存することで、長期的な比較分析も容易です。
決められたプロセスで多角的な視点での公平な評価がおこなえるため、従業員の納得感が高まることがメリットです。さらに、評価基準が明確になることで、従業員のモチベーションの向上にもつながります。
進捗管理機能
評価プロセスのステータス管理も可能です。評価対象となる複数の部下を抱える管理者も、システム上で、個々の目標や達成度、評価業務の進捗状況などを簡単に把握することができます。
人事などの人事評価運用の担当者にとっても、どのプロセスが、どこで滞っているかなどをリアルタイムで把握することができます。
また、評価プロセスに合わせた関係者への案内や、評価進捗が滞っている評価者に対するリマインドなども、一斉配信メール機能で手間なく行うことによって、評価スケジュールをスムーズに進めることができます。
面談記録や行動メモの保存
人事評価システムでは、部下との面談内容や、業務における評価者の行動メモなどを都度システム上に記録しておくことで、評価に関連する情報を一元管理することができます。
半年に一度、四半期に一度など評価期間に振り替えるだけでは、記憶が薄れたり、直近の印象だけで評価をしてしまう、といった問題が起こりがちですが、都度記録を残すことで、そういった問題を防ぐことができます。
記録することによって目標の達成状況や、それに対するフォローアップの過程なども明確になり、評価する側もされる側も、より納得感を持って評価に臨むことができます。
また、システム上にそのような機能があることによって、面談など、上司と部下のコミュニケーション機会を増やす仕掛けにもなります。
中小企業が人事評価システムを選ぶときのポイント
中小企業が人事評価システムを選ぶときのポイントを、3つご紹介します。
自社の評価制度にあっている
評価制度は企業によって大きく異なるため、自社の制度に柔軟に対応できるシステム選びが重要です。MBOやコンピテンシー評価、複合的な評価などさまざまな評価方法に対応し、自社の評価制度を再現しやすいシステムを選びましょう。
例えば、業績評価と行動評価の2つで総合評価を行っている場合、それぞれの評価シートを別々に管理する必要があるシステムを選ぶと管理が煩雑になります。2つの評価を紐づけたり、統合して管理することができるかどうか、などをよく確認をして、導入後の混乱を最小限に抑えましょう。
必要な情報を管理できる
自社の人事評価制度で必要となる情報が管理できるかどうかも重要です。操作性も含めて、必要な情報をスムーズに把握できる機能があるか、評価者、被評価者、人事などの管理者それぞれの視点で確認をしましょう。
多くのことができる高機能なシステムが必ずしも良い、というものではありません。目当ての情報や機能がどこにあるのか分かりにくかったり、何度もクリックが必要だったりすると、導入しても使ってもらえない可能性があります。
自社の評価制度に必要な情報を管理でき、従業員がストレスなく使用できることが重要です。
サポート体制が充実している
人事評価システムは、一度導入すると長く使い続けるものです。システム導入前のコンサルティングはもちろん、導入後の運用支援まで、継続的にサポートしてくれるサービスを選びましょう。組織変更があったときや、システムのアップデート時に、どのような対応をしてもらえるのか、よく確認しておくことが大切です。
中小企業の人事評価システム導入でよくあるトラブルと対処法
人事評価システムの導入時に考えられるトラブルと、対処法を解説します。
従業員の抵抗感と不安感が高い
人事評価システムの導入時には、「新たなシステムの操作を覚えるのが面倒」「評価の公平性が保てるのか」など、従業員の抵抗や疑念が生じることがあります。
人事制度改革と同時にシステムを導入するケースも多く、システムに対する抵抗感だけではなく、人事制度そのものに対する抵抗感や不安がある場合も多くあります。そのため、評価制度についての理解を深めるための説明会の開催やフォローアップも大事になります。
また、段階的な導入も有効です。全社向け説明会から始め、部署ごとの小規模な質疑応答セッション、そして試験導入へと進めることで、従業員は理解を深め、前向きに受けいれられるようになります。
データ移行と初期設定がうまくいかない
人事評価システム導入時には、エクセルデータを取り込めないなど既存データとの互換性の問題や、設定ミスが発生することもあります。
これを防ぐためには、サポート体制が充実したサービスを選定し、十分なテスト期間を確保することが重要です。段階的なデータ移行計画のもと、サービス提供会社による移行支援や事前検証などを受けることができれば安心です。
十分に活用されない
人事評価システムの導入後は、使い勝手の悪さや日常業務の忙しさから、利用頻度が減る、決められた手順で実施されないなど、十分活用されないことがあります。
これを防ぐには、まず操作性のよいシステムを選定することが最重要です。そのうえで、決められたプロセスで運用されているか、活用されているかをモニターすることが大事です。もし十分活用されない場合は、プロセスや制度自体に問題がないかを見直して、必要に応じて改善を検討しなければなりません。
あわせてシステムの効果的な活用方法について継続的な教育をおこなうと、利用の促進につながります。
運用がうまくいかない
システムの導入に際して新しい制度設計や既存制度の見直しをした場合、実際の運用をとおして、制度の不備やプロセスの問題が明らかになることがあります。
このケースでは、まずは実運用まで見越した制度設計と運用設計が不可欠です。これらの設計を支援するコンサルティングなども提供しているサービス企業を選びましょう。潜在的な問題を事前に明らかにすることが、スムーズな運用につながります。
制度設計から支援を提供しているサービスについて、以下の事例も参考にしてみてください
【関連事例】年功序列の社風を刷新し自律的な組織を目指す HR-Platform 人事評価を活用し、人事評価制度を効率的に運用
まとめ
人事評価システムは、中小企業の人材管理を効率化し、従業員のパフォーマンス向上にも寄与するツールです。導入に際しては、自社の評価制度との適合性や操作性のよさ、そしてサポート体制の充実度を重視しましょう。
フォスターリンクでは、HR-Platform人事評価を提供し、中小企業様の人事評価の効率化を徹底的にサポートしています。人事評価システムの導入・運用はもちろん、制度設計からサポートが可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。