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6月 15, 2026
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社会保険「106万円の壁」撤廃 | 2026年10月から給与計算で変わること

社会保険「106万円の壁」撤廃 | 2026年10月から給与計算で変わることアイキャッチ

2026年10月から、社会保険の「106万円の壁」が見直されます。正確には、短時間労働者が社会保険に加入する要件の一つである、賃金要件(月額8.8万円以上)が撤廃される予定です。

この改正は、働く人の手取りに関わる話として取り上げられることが多くあります。
しかし企業側にとっては、給与計算や社会保険手続きの実務に大きく影響するテーマです。

この記事では、106万円の壁の見直しによって給与計算の実務がどのように変わるのか、130万円の壁との違い、企業が今から準備すべきポイントを整理します。

本記事のポイント

1

2026年10月の制度変更を正確に把握する

賃金要件が撤廃され、判断の中心が「週20時間の壁」に移ります。残る要件と変わる要件について整理します。

 
2

給与計算の実務への影響を見極める

加入対象者の判定、保険料の控除、勤怠データとの連動など、現場で増える作業を確認します。

 
3

施行前に準備すべきことを把握する

対象者、コスト試算、判定のゆらぎへの備えなど、今から準備すべき点を整理します。

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社会保険「106万円の壁」の撤廃とは─2026年10月から何が変わるか

まず、今回の改正で何が変わるのかを正確に押さえておきましょう。

2025年6月に成立した年金制度改正法により、短時間労働者の社会保険加入要件が見直されました。これまで、パートやアルバイトが勤務先の社会保険に加入するかどうかは、複数の要件をもとに判断されていました。

その要件の一つが、「月額賃金8.8万円以上」という賃金要件です。年収に換算すると約106万円となるため、一般に「106万円の壁」と呼ばれてきました。

2026年10月からは、この賃金要件が撤廃されます。
つまり、月額賃金が8.8万円未満であっても、その他の要件を満たす場合には、社会保険の加入対象となる可能性があります。

ただし、すべての加入要件がなくなるわけではありません。
企業の実務では、「撤廃される要件」と「変わらない要件」を分けて理解しておくことが重要です。

要件 2026年10月以降の扱い
賃金要件(月額8.8万円以上) 撤廃される
労働時間要件(週20時間以上) 変更なし
雇用期間要件(2か月超の見込み) 変更なし
学生でないこと 変更なし
企業規模要件(従業員51人以上) 2027年10月から段階的に撤廃

賃金要件が撤廃されることで、加入対象を判断する際の中心は「月額賃金8.8万円以上かどうか」から、「週の所定労働時間が20時間以上かどうか」へ移ります。

つまり、これまで「106万円の壁」として意識されてきた基準は、今後は「週20時間の壁」として捉えるとわかりやすくなります。

また、企業規模要件の見直しも重要です。2026年10月時点では、従業員51人以上の企業が対象ですが、2027年10月以降は段階的に対象範囲が拡大され、最終的にはすべての企業が対象になる予定です。

そのため、現時点では対象外の企業であっても、将来的には社会保険の加入対象者が増える可能性があります。
早い段階から、対象者の把握や給与計算・手続き体制の見直しを進めておくことが重要です。

給与計算の実務はどう変わるか

制度の話は以上です。ここからが本題で、給与計算の現場で何が起きるかを見ていきます。

一番大きな変化は、社会保険の加入対象になる従業員が増えることです。これまで年収を106万円以内に抑えていたパート従業員も、週20時間以上働いていれば、賃金に関係なく加入対象になります。

加入対象が増えると、給与計算では次の3つの作業が発生します。

1

社会保険料の控除処理

新たに加入する従業員の健康保険料と厚生年金保険料を計算し、毎月の給与から差し引きます。対象者が増えれば、その分だけ計算と確認の作業が増えます。

2

加入対象者の判定

週20時間以上という労働時間要件は、従業員一人ひとりの勤務状況と照らし合わせて確認する必要があります。
一見すると単純な判定に見えますが、実務では注意が必要です。シフト制や勤務時間が変動する働き方では、所定労働時間と実労働時間の違いや、契約変更のタイミングによって判断が複雑になることがあります。

3

加入手続き

対象者の資格取得届を年金事務所に提出する必要があります。施行の前後は、この手続きが集中します。

── 見落とされやすい勤怠管理との連動

社会保険の加入対象となるかどうかは、「週20時間以上勤務しているか」を基準に判断します。そのため、勤怠データを正しく把握・集計できていることが前提となります。

もし勤怠データの集計に誤りがあれば、加入対象者の判定を誤るだけでなく、保険料の計算にも影響する可能性があります。

今回の法改正への対応は、給与計算だけの問題ではありません。社会保険の加入判定を正しく行うためにも、勤怠管理の精度をあらためて見直すことが重要になります。

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106万円の壁と130万円の壁─給与計算で「年収」に含める範囲が異なる

ここで、実務上間違えやすいポイントを整理します。

「106万円の壁」と「130万円の壁」は、どちらも「年収の壁」と呼ばれます。しかし、給与計算や社会保険の実務では、判定の目的も、年収に含める賃金の範囲も異なります。

まず押さえておきたいのは、2つの壁は性質が異なるという点です。
106万円の壁は、短時間労働者本人が勤務先の社会保険に加入するかどうかを判断する基準の一つでした。一方、130万円の壁は、配偶者などの扶養に入り続けられるかどうかを判断する基準です。

そのため、106万円の壁に関する賃金要件が撤廃されても、130万円の壁までなくなるわけではありません。130万円の壁は、扶養判定の基準として引き続き残ります。

給与計算の現場で特に注意したいのは、判定に含める賃金の範囲が異なることです。

区分 106万円の壁(賃金要件) 130万円の壁(扶養の基準)
基本給・所定内手当 含める 含める
残業代(時間外手当) 含めない 含める
通勤手当 含めない 含める
賞与 含めない 含める

106万円の壁(賃金要件)は、基本給と所定内手当だけで月8.8万円を超えるかを見ます。残業代・通勤手当・賞与は含めません。一方、130万円の壁は、これらを含めた実際の総収入で判断します。

つまり、同じ従業員の「年収」を見る場合でも、106万円の壁と130万円の壁では、計算に含める賃金の範囲が異なります。

2026年10月に106万円の壁に関する賃金要件は撤廃されますが、130万円の壁は扶養判定の基準として残ります。
そのため、企業の実務では、社会保険の加入判定と扶養判定を分けて整理し、それぞれの計算範囲を取り違えないことが重要です。

企業が今から準備すべきこと

施行は2026年10月ですが、準備は早めに進めておくことが重要です。

直前になって対応を始めると、加入対象者の見落としや、社会保険手続きの遅れにつながる可能性があります。特に、パート・アルバイトなど短時間労働者が多い企業では、対象者の洗い出しや勤務条件の確認に時間がかかることもあります。

ここでは、企業が今から確認しておきたい準備事項を整理します。

施行前に進めておきたい準備

  • 週20時間以上働くパート・アルバイトをリストアップし、新たに加入対象になる人数を把握する
  • 対象になる従業員に、保険料の負担が発生することを事前に説明する
  • 働き方を調整したい従業員がいれば、シフトや雇用契約の見直しを検討する
  • 増える社会保険料の事業主負担を、人件費の試算に織り込む
  • 加入手続きと毎月の保険料計算を、自社の体制で対応できるか確認する


働き控えによる「加入判定のゆらぎ」

このなかで、見落とされやすい論点が一つあります。それは、働き控えによる加入判定のゆらぎです。

賃金要件がなくなると、保険料の負担を避けたい従業員は、週20時間を超えないように勤務時間を調整しようとします。すると、月によって勤務時間が20時間を上回ったり下回ったりする従業員が出てきます。

この場合、加入対象かどうかの判定が、月ごとにゆらぎます。
判定の基本は雇用契約上の所定労働時間ですが、契約上は週20時間未満でも、実労働時間が2か月連続で週20時間以上となり、その後も続く見込みなら、3か月目から加入対象になります。

法律上の基準は「週20時間」ですが、シフト制では月単位で管理するほうが現実的なため、実務では週20時間を月に換算した「月約87時間」を目安にすることが多くあります。これを2か月連続で超えたかどうかを確認します。 

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一時的に週20時間を超えただけで、直ちに社会保険の加入対象になるわけではありません。しかし、契約上は週20時間未満であっても、実際には20時間以上の勤務が常態化している場合は、加入対象となる可能性があります。

加入漏れが発生すると、後からさかのぼって保険料の負担を求められるリスクもあります。特にシフト制の職場では、勤務時間が月ごとに変動しやすいため、毎月の勤怠データを確認しながら対象者を判定する作業が、給与計算担当者の負担として積み上がりやすくなります。

だからこそ、対象者の把握は早めに進めておくことが重要です。誰が安定して週20時間以上勤務しているのか、誰が加入対象の境界線上にいるのかを事前に整理しておくことで、施行後の判定や手続きを進めやすくなります。

社会保険料の負担増に備えて確認したい支援策

106万円の壁の撤廃は、企業の社会保険料負担を増やします。社会保険料は従業員と企業が折半で負担するため、新たに加入する従業員が増えれば、その分だけ企業の負担額も増えます。

社会保険_負担増_試算図

たとえば、新たに加入対象になる従業員が10人いて、1人あたり月1.5万円程度の事業主負担が発生すると仮定します。あくまで一例ですが、月15万円、年間で180万円ほどの負担増になります。

社会保険料の事業主負担は、報酬のおおよそ15%が目安です(厚生年金18.3%・健康保険約10%を労使で折半。健康保険料率は協会けんぽの場合、都道府県で異なります)。
実際の額は賃金や保険料率(都道府県・年度で変動)によって変わるため、自社の対象者数で試算しておくことをおすすめします。 

社会保険料の負担増に対しては、国による支援策も用意されています。
たとえば、「年収の壁・支援強化パッケージ」や、短時間労働者の労働時間延長・賃金増額を支援する「キャリアアップ助成金」などがあります。制度ごとに対象要件や申請方法が異なるため、活用を検討する場合は、厚生労働省の情報を確認し、必要に応じて社会保険労務士に相談すると安心です。

106万円の壁の見直しは、企業にとって社会保険料や実務負担の増加につながる可能性があります。
一方で、支援制度を活用できれば、一定の負担軽減につながる場合もあります。制度改正への対応を進める際は、負担増だけでなく、利用できる支援策がないかもあわせて確認しておくことが重要です。

法改正対応に追われないために─給与計算アウトソーシングという選択肢

106万円の壁の撤廃に限らず、給与計算は法改正のたびに複雑になっています。近年だけでも、社会保険の適用拡大、割増賃金率の引き上げ、年5日の有給休暇取得義務など、対応すべき項目は増え続けています。

こうした変化に社内だけで対応し続けるのは、簡単ではありません。
特に少人数で人事を担う企業では、本来の業務をしながら法改正を追いかけ、計算に正確に反映するのは大きな負担です。今回の106万円の壁のように、判定のゆらぎや壁ごとの賃金範囲の違いまで正確に扱うとなると、なおさらです。

対応方法の一つが、給与計算業務の外部委託です。

給与計算を専門会社に任せることで、法改正への対応、毎月の給与計算、社会保険料の控除などを専門的な視点で確認できます。社内の担当者は、対象者の把握や従業員への説明、勤務条件の見直しといった、自社で判断すべき業務に集中しやすくなります。

フォスターリンクの給与計算代行では、毎月の給与計算に加え、法改正に関する情報提供や、運用改善のサポートも行っています。提携する社会保険労務士事務所と連携できるため、今回のような制度改正にも、計算実務と法令確認の両面から対応できます。

給与計算を自社で抱え続けるか、一部を外部に任せるかは、対象者数や社内体制によって判断が分かれます。106万円の壁の見直しを機に、給与計算体制そのものを見直すことも有効です。

給与計算代行サービスのご相談

法改正対応を含む毎月の給与計算を、社会保険労務士事務所と連携してサポートします。
自社の体制に合った委託範囲を、まずはご相談ください。


社会保険「106万円の壁」撤廃に関するよくある質問

Q. 106万円の壁の撤廃は、いつから施行されますか

賃金要件(月額8.8万円以上)の撤廃は、2026年10月から施行される予定です。企業規模要件(従業員51人以上)は、2027年10月から段階的に撤廃される予定です。

Q. 週20時間未満で働く従業員は、加入対象になりますか

2026年10月時点では、週20時間以上という労働時間要件は維持されます。そのため、週20時間未満の従業員は、原則として加入対象になりません。ただし、今後の改正でこの要件が見直される可能性もあるため、最新情報の確認は続けてください。

Q. 従業員数が50人以下の企業も対応が必要ですか

2026年10月時点では、企業規模要件により従業員51人以上の企業が対象です。50人以下の企業はこの時点では対象外ですが、2027年10月から企業規模要件が段階的に撤廃され、最終的にはすべての企業が対象になる予定です。今のうちから制度を理解しておくことをおすすめします。

Q. 一時的に週20時間を超えた月があれば、すぐに加入対象になりますか

一時的に超えただけで即座に加入対象になるわけではありません。恒常的に週20時間以上の勤務が見込まれるかどうかを、雇用契約や実際の勤務実態から判断します。シフト制などで勤務時間が変動する場合は、勤務実態の継続的な確認が必要です。

参考資料

  • 厚生労働省「年金制度改正法(令和7年法律第33号)が成立しました」
  • 厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」
  • 厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ」
  • 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大」

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