勤務間インターバルは、終業から翌日の始業までに一定の休息時間を確保する制度です。現在は企業の努力義務とされていますが、労働基準法の見直しに伴い、義務化を含む規制強化が検討されています。
勤務間インターバルを導入するには、就業規則やシフトの組み方、勤怠システムの設定などを見直す必要があります。
制度の詳細が決まってから現状確認を始めると、施行までに十分な準備期間を確保できない可能性があるため、早めに自社の勤務実態や運用体制を確認しておくことが重要です。
本記事では、勤務間インターバル制度の現在の位置づけ、義務化に向けた検討状況、休息時間の考え方、企業が確認しておきたい実務上のポイントを解説します。
社労士監修
フォスターリンク株式会社
2000年の創業以来、700社以上の人事支援を手がける人事のベストパートナー。社会保険労務士の資格を持つ担当者が在籍し、勤怠管理・KING OF TIME運用支援の実務知見をもとに本記事を監修・執筆しています。
勤務間インターバルとは?現在の制度と義務化に向けた議論
勤務間インターバルとは、終業時刻から翌日の始業時刻までの間に、一定時間以上の休息を確保する仕組みです。
残業が深夜に及んでも、翌朝の出社までに最低限の睡眠と生活の時間を残す、という考え方です。
2026年7月時点で、一般企業に対する勤務間インターバルの義務化時期は決まっていません。
現在は2019年4月からの努力義務であり、義務化を含む規制強化が検討されています。
11時間という休息時間も、現時点では確定した法定基準ではありません。
この動きの起点になっているのが、2025年1月に公表された厚生労働省の労働基準関係法制研究会報告書です。
この報告書では、勤務間インターバル制度について、現行の努力義務から一歩進め、原則として11時間の休息確保を義務付ける方向性が示されました。
この報告書を受けて、当初は2026年の通常国会に労働基準法の改正案が提出される見通しでした。
しかし2025年12月、政府は改正案の提出を見送る方針を明らかにしています。義務化の方向性自体が撤回されたわけではなく、実施時期の調整が続いている段階です。今後、あらためて法案提出の時期が検討されていく見通しです。
これも踏まえて、現時点で確認できる内容を整理します。
| 確認事項 | 2026年7月時点の状況 |
|---|---|
| 義務化はいつからか | 時期は未定 |
| 現在の位置づけ | 2019年4月から努力義務 |
| 今後の動向 | 義務化を含む規制強化を検討中(2026年通常国会への改正案提出は見送り) |
| 休息時間 | 11時間案などが議論されているが未確定 |
| いま着手できること | 勤務実態・就業規則・システム設定の確認 |
施行時期だけでなく、制度の方向性を踏まえて準備を進めることが重要です。
勤務間インターバルの義務化に向けて、今から確認すべきこと
勤務間インターバルの義務化をめぐって、多くの企業が最初に気になるのは「いつから始まるのか」という点です。上述したように、現時点では一般企業に対する義務化の時期や具体的な制度内容はまだ決まっていません。
ただし、施行時期が未確定であっても、自社の勤務実態や運用体制を確認しておく意味はあります。
勤務間インターバルへの対応は、単に制度が始まってから条文を追加すれば済むものではなく、シフトの組み方、就業規則、勤怠システムの設定、現場での運用ルールまで関係するためです。
制度対応に向けて整理すべき実務課題
勤務間インターバルを実際に運用するには、終業時刻と翌日の始業時刻を正しく把握し、休息時間が不足する勤務を見つけ、必要に応じてシフトや始業時刻を調整する仕組みが必要です。
長時間労働が常態化している職場では、業務量や人員配置そのものの見直しが必要になることもあります。
制度の詳細が決まってから初めて現状確認を始めると、施行までに十分な準備期間を確保できない可能性があります。
まずは、自社で勤務間隔を正確に把握できているか、就業規則と実際のシフト運用にずれがないか、勤怠システムで休息不足を確認できる状態になっているかを確認しておくことが重要です。
実際、厚生労働省の令和7年就労条件総合調査によると、勤務間インターバル制度を導入している企業は6.9%です。導入を予定または検討している企業は13.8%にとどまり、導入予定がなく検討もしていない企業は78.7%を占めています。
現時点では、制度が広く普及しているとはいえない状況です。
勤務間インターバル制度の導入状況(2025年)
導入済み
6.9%
予定・検討中
13.8%
予定も検討もなし
78.7%
出典:厚生労働省「令和7年就労条件総合調査の概況」
一方で、早めに勤務実態を確認しておくことは、将来の制度変更に備えるうえで有効です。
自社の課題を先に把握しておけば、義務化の内容が具体化した際にも、必要な対応を判断しやすくなります。
先行して取り組むことで得られる効果
勤務間インターバルへの対応は、法改正への備えにとどまりません。休息時間を確保する取り組みは、従業員の健康管理や働きやすい職場づくりにもつながります。
厚生労働省のポータルサイトでは、すでに勤務間インターバル制度を導入している企業の事例も紹介されています。たとえば、勤務間インターバルを11時間に設定し、社員の生活時間や睡眠時間の確保につなげた取り組みなどがあります。
このような取り組みは、長時間労働の抑制だけでなく、疲労の蓄積を防ぎ、業務の安全性や生産性を保つうえでも意味があります。従業員にとっても、勤務終了後から次の勤務開始までの時間が確保されることで、生活リズムを整えやすくなります。
また、勤務間インターバルの導入を検討する過程では、シフトの組み方や勤怠管理の方法、管理者の確認フローを見直すことになります。そのため、制度対応をきっかけに、勤怠管理の属人化や確認漏れ、シフト作成時の負担を整理できる場合もあります。
義務化を待つのではなく、まず現状を確認しておくことは、将来の法改正対応をスムーズにするだけでなく、従業員が安心して働ける体制づくりにもつながります。
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勤務間インターバルと合わせて、36協定の上限管理を見直すと、勤怠法令対応の全体像を把握しやすくなります。特に複数月平均80時間の二重管理は、インターバルとあわせて整備すべき論点です。
勤務間インターバルは何時間か|11時間・9時間をめぐる論点
勤務間インターバルを設定するとき、最初に決めるのが休息の長さです。議論では主に11時間と9時間が取り上げられます。
11時間は、義務化の議論で一つの案として挙げられている水準です。EUでは1993年から24時間ごとに最低連続11時間の休息が義務づけられており、国際的な参照点になっています。
ただし、日本の制度で何時間が基準になるかは確定していません。
9時間は、現在の助成制度で区分に使われている時間です。国の助成金では、9時間以上11時間未満と11時間以上で区分が設けられています。
これは支援制度上の区分であり、法令上の最低基準を意味するものではありません。将来の制度で何時間が基準とされるかも、未確定です。
自社で何時間に設定するかは、業務の実態から逆算して判断します。
たとえば終業が23時になりうる職場で11時間を設定すれば、翌日の始業は10時以降になります。この始業の繰り下げが業務上どこまで許容できるかが、設定値を決める分かれ目です。
11時間を基準とした場合のインターバル不足例
休息が取れているかは、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の組み合わせで決まります
ケース1:深夜残業の翌日に早朝出勤
ケース2:夜勤明けに通常出勤
いずれも、月間の残業時間が上限内でも発生しうるケースです。深夜残業と早出の組み合わせはシフト設計の時点でチェックしておく必要があります。
※11時間は現在検討されている案の一つであり、一般企業の法定基準として確定したものではありません。
なお、自動車運転者には改善基準告示、医師には医師の働き方改革に基づく勤務間インターバルなど、業種・職種別のルールが設けられています。
一般企業にそのまま適用される基準ではありませんが、制度設計の参考になります。
勤務間インターバルの不足が企業に与える影響
現時点では、勤務間インターバルを確保できなかったこと自体に直接の罰則はありません。また、今後義務化された場合の罰則の有無や内容も、まだ決まっていません。
しかし、休息時間が十分に確保されない状態が続けば、従業員の健康や業務の安全性に影響を及ぼす可能性があります。
特に注意したいのが、安全配慮義務です。
企業には、従業員が安全かつ健康に働ける環境を整える責任があります。休息不足を伴う長時間労働を放置し、健康被害が生じた場合には、安全配慮義務違反として損害賠償を求められる可能性があります。
業務への影響も見過ごせません。疲労が十分に回復しないまま勤務を続けると、集中力や判断力が低下し、ミスや事故につながるおそれがあります。
休息時間の確保は、従業員の健康を守るだけでなく、業務品質や安全性を維持するうえでも重要です。
義務化の議論では、緊急時などにインターバルを確保できなかった場合の代替措置も検討されています。
これは、やむを得ず休息が不足したとき、後日その分の休息を別途与えるといった、実際に休ませる形での埋め合わせを想定したものです。
つまり、不足を記録したり本人に通知したりするだけでは足りず、休息そのものを確保することが求められる、という考え方です。後で触れる勤怠システムの検知は、この対応の入口にはなりますが、それだけで完結するわけではない、という前提を知っておく必要があります。
勤務間インターバルへの対応に向けて、法令・就業規則・実運用・システム設定の整合性を確認しませんか。
勤務間インターバルの義務化に備える勤怠管理のポイント
勤務間インターバルへの対応は、就業規則に条文を追加するだけでは完結しません。実際の運用では、終業時刻と翌日の始業時刻を正しく把握し、休息時間が不足する勤務を検知し、必要に応じてシフトや始業時刻を調整する流れまで整える必要があります。
そのため、重要になるのは「規定を作ること」だけでなく、日々の勤怠データをもとに、休息時間を継続的に確認できる仕組みを持つことです。
インターバル管理に必要な勤怠の機能
勤務間インターバルを守れているかは、ある日の終業時刻と翌日の始業時刻を突き合わせて初めて分かります。深夜残業と翌日の早出が重なる場合や、シフト勤務が多い職場では、手作業で全員分を確認するのは現実的ではありません。
勤務間インターバルを効率的に管理するには、次のような機能があると実務上役立ちます。
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こうした管理を行ううえで、勤怠システム側の設定が就業規則や実際の運用と一致しているかが重要になります。
休息時間の基準を何時間にするのか、どの雇用区分を対象にするのか、シフト勤務や深夜勤務をどのように扱うのかによって、必要な設定は変わります。
たとえばKING OF TIME(キングオブタイム)には、設定した基準時間を下回った回数を集計する「勤務間インターバル不足カウント機能」があります。休息時間の基準を設定すると、不足した回数を従業員ごとに確認できるため、発生状況の把握や運用改善に活用できます。
ただし、システムが行うのは不足の検知と集計です。シフトの変更や始業時刻の繰り下げ、代替休息の付与まで自動で完結するわけではありません。機能を有効に活用するには、設定値と就業規則、現場の運用ルールをそろえておく必要があります。
検知できても、それだけでは守れない
勤怠システムで休息不足を検知できても、勤務間インターバルを適切に運用できているとは限りません。
重要なのは、不足を把握したあとに、誰が確認し、どのように是正するかまで決まっていることです。
たとえば、不足回数が表示されても、管理者が確認するタイミングや、始業時刻の繰り下げを判断するルールがなければ、実際の改善にはつながりません。また、就業規則の定めとシステムの設定値、現場のシフト運用がずれている場合、集計結果そのものが実態を正しく反映していない可能性もあります。
次のいずれかに当てはまる場合は、現状を見直すことも検討していきましょう。
現状を見直すべきサイン
KING OF TIMEの設定を確認する際のポイント
まずは、法令・就業規則・実運用・システム設定の間にずれがないかを確認することが出発点です。そのうえで、必要に応じて勤怠システムの設定変更や、管理者の確認フロー、シフト作成時のルールを整えていきます。
実際の支援現場でも、就業規則上のルールは整っている一方で、勤怠システムの設定値や現場のシフト運用に反映されていないケースは少なくありません。
勤務間インターバルへの対応では、制度として定めるだけでなく、日々の勤怠データで確認できる状態にしておくことが重要です。
KING OF TIMEを利用している場合は、勤務間インターバル不足カウント機能の設定値が、自社の就業規則やシフト体系と合っているかを確認することが重要です。設定値が実態とずれていると、不足回数を正しく把握できず、必要な是正対応につながらない可能性があります。
自社だけで設定値や運用ルールの整合性を確認するのが難しい場合は、KING OF TIMEの設定代行や運用支援を活用する方法もあります。勤務間インターバルへの対応は、単に機能を有効化するだけでなく、自社のルールに合わせて正しく設定し、運用に定着させることが重要です。
KING OF TIMEのインターバル設定、自社のルールと合っていますか
就業規則・雇用区分・シフト体系に合わせた設定から、運用定着までを支援します。
勤務間インターバルへの対応を進めるために
勤務間インターバルは、2019年から努力義務として存在し、いま労働基準法の見直しのなかで義務化を含めて検討されています。時期も内容も未確定ですが、就業規則やシフト、勤怠システムの見直しには時間を要するため、現状把握は早めに進めておく必要があります。
守れるかどうかは、規定を作ったかではなく、日々の勤怠を仕組みで管理できているかで決まります。休息不足を検知し、それを是正につなげる運用と、法令・就業規則・運用・システム設定の整合があって、はじめてインターバルは守られます。
まずは自社の勤務間隔の実態を把握し、4つの整合がとれているかを点検するところから始めるのが、現実的な第一歩です。
勤務間インターバルの対応を、診断から設定・運用まで支援します
フォスターリンクでは、「勤怠まるごと診断」による現状確認から、「KING OF TIMEの設定・運用支援」まで一貫して対応します。
何から着手すべきか分からない段階でも、貴社の状況に合わせて進め方をご提案します。
勤務間インターバルに関するよくある質問
通勤時間や出張の移動時間はインターバルに含まれますか
勤務間インターバルは、終業時刻から翌日の始業時刻までの時間で判定するため、その間にある通勤時間も制度上のインターバル時間に含まれます。ただし、通勤時間が長いほど、睡眠や生活に充てられる実質的な休息時間は短くなります。
そのため、制度設計では通勤実態も考慮することが重要です。出張の移動が実労働とみなされる場合は、その分インターバルに影響するため、旅程の組み方にも目を配る必要があります。
管理監督者にも勤務間インターバルは適用されますか
将来義務化された場合に、管理監督者が対象となるかはまだ確定していません。
ただし、適用範囲にかかわらず、企業には従業員の健康と安全に配慮することが求められます。
健康確保の観点から、管理監督者についても休息の確保に目を配ることが望まれます。
勤務間インターバルと36協定はどう関係しますか
両者は別の制度です。36協定が残業時間の総量に上限を設けるのに対し、勤務間インターバルは1日ごとの休息を確保するものです。
月単位の残業上限を守っていても、特定の日に深夜まで働けば翌日の休息は不足します。総量の規制では守りきれない「日々の休息」を補うのがインターバル、という関係です。
インターバルを確保できなかった場合、いまの段階で罰則はありますか
現在は努力義務のため、確保できなくても直接の罰則はありません。
ただし、休息不足の長時間労働で健康被害が生じれば、安全配慮義務違反として損害賠償を問われる可能性があります。
罰則がないことと、リスクがないことは同じではないため、あらかじめ備えておく必要があります。
一部の部署や対象者だけに導入してもよいですか
現在の努力義務のもとでは、長時間労働が生じやすい部署などから段階的に導入する方法もあります。
運用を確かめながら全社へ広げる進め方が現実的です。ただし、将来義務化された場合の対象範囲はまだ決まっていないため、制度の動向は引き続き確認が必要です。
出典
- 厚生労働省「勤務間インターバル制度をご活用ください」
- 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(第2条第1項)
- 厚生労働省 労働基準関係法制研究会 報告書(2025年1月)
- 厚生労働省「令和7年就労条件総合調査の概況」
- 改善基準告示(自動車運転業務)・医師の勤務間インターバル(2024年4月適用)
- 厚生労働省 労働基準関係法制研究会 報告書(2025年1月)
