社内の様々な申請、承認、決裁手続きは、内部統制上も欠かせないプロセスです。近年、リモートワークの普及もあいまって申請や商人プロセスをシステム上で実施するワークフローシステムを取り入れる企業が増えています。
今回は、ワークフローの概念や目的、システムの導入のメリットや注意点を解説します。
ワークフローとは何か?
そもそも「ワークフロー」とはなんでしょうか。ここでは、ワークフローの定義とその目的を紹介します。
1.ワークフローとは
ワークフローとは、企業や組織内で行われる各種申請手続きを効率的に管理・処理するための一連のプロセスのことを指します。申請は、経費精算、休暇取得、購買など多岐にわたります。
これらの申請を承認者に届け、適切に処理するための手順がワークフローとして定義されます。
ワークフローは、申請内容の作成、提出、承認、記録、フィードバックといった一連のステップから構成されます。ワークフローは通常、デジタル化されたシステムによって自動化され、データとして管理されることが多いです。
これにより、手動で行われる作業の手間を削減し、申請の遅延やミスを防ぐことができます。
以下で述べる「ワークフロー」は、特別な理由がある場合を除いて、ワークフローシステムのことを指します。
2.ワークフローの目的
ワークフローの主な目的は、業務プロセスの効率化と透明性の向上です。具体的には、以下のような目的があります。
業務の効率化: 申請手続きが標準化、自動化されることで、手動で行うよりも迅速に処理できるようになります。これにより、従業員が申請書類の提出や承認を待つ時間が短縮され、生産性が向上します。
エラーの削減: 手作業での申請処理はヒューマンエラーのリスクが伴いますが、デジタル化されたワークフローシステムを利用することで、入力ミスや見落としが減少します。
透明性の向上: 申請の進捗状況がリアルタイムで確認できるため、申請者も承認者もステータスを把握しやすくなります。これにより、申請がどの段階で止まっているのか、誰が承認を行っているのかが明確になります。
コンプライアンスの遵守: ワークフローシステムは、企業の規則や法律に基づいた手続きを確実に遵守するためのツールでもあります。これにより、企業は法令順守を確実に行うことができます。
3.ワークフローの種類と例
ワークフローの一般的な種類(経費精算、休暇申請など)
ワークフローには多くの種類があり、それぞれが特定の業務プロセスに対応しています。以下は、一般的な申請ワークフローの種類の例です。
経費精算ワークフロー: 従業員が業務上の支出を企業に対して精算するためのプロセスです。通常、領収書の提出、支出内容の記載、上司の承認といったステップを含みます。
購買申請ワークフロー: 必要な物品やサービスを購入するためのプロセスです。購買の必要性の説明、承認者への提出、予算の確認、購買担当者による手配などのステップを含みます。
勤怠申請ワークフロー: 勤務時間や休暇の申請を行うプロセスです。これには、残業申請や時短勤務の申請などが含まれます。
各申請の具体的な流れと必要なステップ
それぞれのワークフローには、具体的なステップが設定されており、これにより一連のプロセスが確実に実行されます。以下は、いくつかのワークフローの具体的な流れとステップの例です。
経費精算ワークフローの具体例:
ステップ1: 従業員が経費精算システムにログインし、支出内容を入力。
ステップ2: 支出内容に関連する領収書や証拠書類をアップロード。
ステップ3: 経費精算申請を上司に提出。
ステップ4: 上司が申請内容を確認し、承認または修正を依頼。
ステップ5: 承認された申請が経理部門に送信され、支払い処理が行われる。
休暇申請ワークフローの具体例:
ステップ1: 従業員が勤怠管理システムにアクセスし、希望する休暇日を入力。
ステップ2: 休暇理由や必要な情報を記入し、申請を上司に送信。
ステップ3: 上司が休暇申請を確認し、承認または却下。
ステップ4: 承認された休暇申請が人事部門に通知され、休暇日が記録される。
このように、申請ワークフローは企業の業務効率化と透明性の向上に寄与します。それぞれのワークフローには申請、照合、承認、差戻など、あらかじめ定義した特定のステップがあり、これにより一連のプロセスが円滑に進行するように設計されています。
ワークフローのメリット
ワークフローを導入することによる主なメリットは4つあります。
- 手作業の削減
- 自動化による業務スピードの向上
- ヒューマンエラーの減少
- 可視化によるコンプライアンス向上
1.手作業の削減
申請ワークフローの導入により、多くの手作業が自動化され、業務の効率化が実現します。従来の手動プロセスでは、紙ベースの申請書を作成し、手渡しやメールで送信し、承認者が目視で確認・承認するという流れが一般的でした。
また、申請された内容を記録するために台帳に転記したり、キャビネットに保管したり、といった手作業も発生します。
自動化された申請ワークフローシステムでは、申請書の作成から提出、承認、記録までの全プロセスがシステム上でデジタル化されます。
例えば、入社申請ワークフローでは、従業員が自分で社員情報などを入力し、人事担当者に送信します。
人事担当者はシステム上で申請内容を確認し、ワンクリックで承認または修正依頼を行います。承認された内容は、そのままデータベースに保管され、安全に管理されます。
このような自動化により、手作業の負担が大幅に軽減されます。
2.自動化による業務スピードの向上
申請ワークフローの自動化で、承認プロセスも迅速になります。従来の紙や手動プロセスでは、申請書が承認者のデスクに届くまでに時間がかかり、承認者が忙しい場合にはさらに遅延が生じることがあります。
また、申請内容に不備がある場合には、再提出が必要となり、さらなる時間がかかります。
一方、自動化されたワークフローシステムでは、申請が提出されると同時に承認者に通知が送られ、即座に確認が可能です。
システムは承認者がどこにいてもアクセスできるため、出張中や在宅勤務中でも迅速に対応できます。
また、申請内容に不備がある場合には、システムが自動的にエラーを検出し、申請者に修正を促すため、再提出の手間も削減されます。
このように、迅速な承認プロセスにより、業務のスピードが向上し、企業全体の生産性が高まります。
3.ヒューマンエラーの減少
ワークフローのデジタル化は、ヒューマンエラーの減少にもつながります。
手動プロセスでは、申請書の記入ミスや計算間違い、書類の紛失などが頻繁に発生します。これらのエラーは、申請内容の不正確さや承認の遅延を引き起こし、最終的には業務全体の効率を低下させます。
デジタル化されたワークフローシステムでは、申請内容の入力や計算が自動化されており、ミスが発生するリスクが大幅に減少します。
例えば、経費精算システムでは、領収書のスキャンや自動入力機能を利用することで、手動入力の部分が減り、計算ミスも防止できます。
また、システムは申請内容に不備がある場合には警告を発し、修正を促すため、エラーの発生を未然に防ぐことができます。
4.可視化によるコンプライアンス向上
ワークフローの利用は、企業内の信頼性とコンプライアンスの向上にも役立ちます。
従来の手動プロセスでは、申請書の進捗状況や承認履歴を追跡することが難しく、申請がどの段階で止まっているのか、誰が承認を行ったのかが不明確になることがあります。
デジタル化されたワークフローシステムでは、申請の進捗状況や承認履歴がリアルタイムで可視化、記録されます。また、必要に応じて関係者が閲覧できるように権限設定をすることが可能です。
これにより、申請者は自分の申請がどの段階にあるのか、承認者はどの申請を処理すべきかを常に把握できます。
また、監査やコンプライアンスチェックの際にも、すべての承認履歴が記録されているため、透明性が確保されます。
さらに、承認履歴の可視化は、不正行為の抑止にもつながります。すべての申請と承認が記録され、誰がいつ何を承認したかが明確になるため、不正な申請や承認のリスクが低減します。
これにより、企業内の信頼性が向上し、コンプライアンス違反のリスクも低減することができます。
【関連記事】違反事例から学ぶ コンプライアンス違反をなくす3つのポイント
このように、申請ワークフローのメリットは多岐にわたり、企業の業務効率化、生産性向上、エラーミスの削減、コンプライアンスの向上に大きく寄与します。
自動化されたワークフローシステムの導入により、企業はより効率的かつ透明性のある業務運営を実現し、競争力を高めることができます。
適切なワークフローツールの選定
1.ワークフローツールの種類と特徴
申請ワークフローの導入において、適切なワークフローツールを選定することは非常に重要です。ワークフローツールには様々な種類があり、それぞれに特徴があります。
以下に代表的なツールの種類とその特徴を挙げます。
クラウド型ワークフローツール: クラウドベースのワークフローツールは、インターネット経由でアクセス可能なため、場所を問わず利用できます。クラウド型のメリットは、導入が簡単であり、初期投資が少なく済む点です。
また、最新のアップデートやセキュリティパッチが自動的に適用されるため、常に最新の状態で使用できます。
オンプレミス型ワークフローツール: オンプレミス型のワークフローツールは、自社サーバーにインストールして使用するタイプです。このタイプのツールは、カスタマイズ性が高く、自社の特定のニーズに合わせて設定できます。
また、データの管理が自社内で行えるため、セキュリティ面での安心感があります。しかし、初期導入コストが高く、システムのメンテナンスが必要です。
2.自社に合ったツールの選び方
自社に合ったワークフローツールを選定するためには、以下のポイントを考慮することが重要です。
必要な機能はなにか: まず、自社の業務プロセスや申請の種類を明確にし、それらを効率化するために必要な機能をリストアップします。
必要な申請の種類やプロセスをシステム上で実現できるかどうかを確認して、ツールを選定することが重要です。
一方で、既存のプロセスにこだわりすぎるのではなく、システムに合わせたプロセスに業務を変えていく、ということも有効です。業務効率化という意味で、そういったアプローチは効果があります。
使いやすいか: ワークフローツールの操作性や使いやすさも重要なポイントです。従業員が使いこなせなければ、導入の効果が半減します。ツールのデモや試用版があれば、積極的に利用してみましょう。
コストはどのくらい: 初期導入費用だけでなく、運用コストやメンテナンス費用も考慮します。クラウド型は月額料金がかかる場合が多く、オンプレミス型は初期費用が高くなりますが、長期的な視点でコストを比較することが重要です。
データ出力や連携ができるか:例えば、交通費申請データを給与計算システムに渡すなど、外部システムとデータをやり取りする機能も重要です。どんな外部システムとデータをやり取りする必要があるのかを洗い出し、それに対応したAPI連携機能や、ファイル入出力機能があるかどうかを確認しましょう。
セキュリティとデータ保護: 特に機密情報を扱う場合、セキュリティ対策がしっかりしているかを確認します。データの暗号化やアクセス制御、バックアップ体制などをチェックし、自社のセキュリティポリシーに合致しているかを確認します。
カスタマイズ性と拡張性: 将来的な業務の変化や成長に対応できるよう、カスタマイズ性や拡張性が高いツールを選ぶことが重要です。自社のニーズに合わせて柔軟に対応できるツールを選定します。
導入時の注意点と成功の秘訣
スムーズな導入のための準備とステップ
ワークフローツールの導入は、適切な準備と計画が不可欠です。以下のステップを踏むことで、スムーズな導入が可能になります。
導入計画の策定: 導入の目的や目標を明確にし、具体的な導入計画を立てます。導入の目的や目指す効果、スケジュールなどを明確にして、マネジメントから現場の従業員まで、しっかりと共有できることが大切です。
現状分析と要件定義: 現在の業務プロセスを分析し、改善点や課題を洗い出します。その上で、ワークフローツールに求める要件を明確に定義します。
ツールの選定: 自社の要件に合ったツールを選定します。機能だけでなく、必要なサポートが受けられるかなどもよく検討して、信頼できるベンダーを選びます。ベンダーとの協力体制を築き、導入に向けた準備を進めます。
テスト導入とフィードバック収集: 特定部署での導入など、小規模なテスト導入を行い、実際の業務における動作確認を行います。従業員からのフィードバックを収集し、必要な修正や調整を行います。
本格導入とトレーニング: テスト導入の結果を踏まえて、本格的な導入を開始します。同時に、従業員向けのトレーニングを実施し、ツールの使い方を習得してもらいます。
従業員への教育とサポートの重要性
ワークフローツールの導入が成功するためには、社員への教育とサポートが欠かせません。新しいツールに対する抵抗感や不安を取り除き、スムーズに運用できるようにするためには、以下のポイントが重要です。
操作説明会などの実施: 導入前後に、社員向けの操作説明を実施します。基本操作だけでなく、業務プロセスに沿った説明も重要です。
どんなシーンでどのように利用するのか、を従業員に理解してもらったうえで利用できるようにします。
マニュアルと窓口の設置: 操作マニュアル、業務マニュアルや動画、FAQなどを整備し、社員が必要な情報をすぐに取得できるようにします。また、相談窓口を周知し、困ったときにサポートを受けられる体制を整えます。
フィードバックの収集と改善: ツールの運用開始後も、社員からのフィードバックを定期的に収集し、改善点を見つけて対応します。これにより、ツールの使い勝手が向上し、社員の満足度も高まります。
継続的な教育とフォローアップ: ツールの導入後も、継続的な教育やフォローアップを行います。新機能の追加やシステムのアップデートに対応できるよう、定期的なトレーニングや情報提供を行うことが、理解と協力の促進にもつながります。
このように、申請ワークフローの導入には、適切なツールの選定と導入計画の策定、社員への徹底した教育とサポートが不可欠です。これらをしっかりと行うことで、ワークフローツールの効果を最大限に引き出し、企業全体の業務効率化と生産性向上を実現することができます。
ぜひ、自社の状況に合わせて、適切なシステムの導入を検討してみてください。
「HR-Platform人材管理」は、企業の人事データを一元化し、効率的な労務管理を支援するシステムです。これにより、申請手続きや労務管理の煩雑さを軽減し、タレントマネジメントにも役立ちます。
システムは、必要な人事情報を集約し、各種申請手続きをオンラインで完結させ、データ活用や運用サポートも提供します。また、細かな権限設定やアラート機能なども搭載しています。詳細はこちらをご覧ください。