SBCメディカルグループ 湘南美容クリニック 様の導入事例

医師という専門職人材の360度評価事例 
~病院組織のリーダーシップ開発から学ぶこと~ 

 

ご利用サービス:360度評価

 

 

 湘南美容外科クリニックは全国展開する大手美容外科です。医師や看護師といったプロフェッショナル人材で構成される病院組織に、360度フィードバックを導入しています。その目的や効果はどのようなものだったのでしょうか。
 これまで360度フィードバックのサービスを400社以上に提供している組織人材開発コンサルタントの菅野が、SBCメディカルグループ 湘南美容外科クリニック ランジェコスメティーク(株) コーポレー ト本部本部長の目黒勝道氏にインタビューしました。

 

各院長のリーダーシップ開発を目的に360度フィードバックを実施

 

菅野:本日はよろしくお願いします。まず、貴社の概要をお話しいただけますか。


目黒:湘南美容外科クリニックは、2000年に創業しまして今年で17年目になります。現在、58のクリニックを全国で展開しており、年間来院者数は約100万人、リピーターの方が約9割になります。お陰様で、業績は毎年125%ずつ拡大しています。
 従業員としては、医師が約150名、看護師が約850名、受付カウンセラーが約600名、サポートスタッフを含めると、総勢2,000名。医師は男性が8割ですが、他は女性比率が高い組織です。

 


菅野:弊社の360度フィードバックを導入いただいて2期目となりますが、対象は分院長、本部長、エリアマネジャーでしたね。


目黒:そうです。分院長は医師で各クリニックの責任者、エリアマネジャーは複数のクリニックの看護師や受付カウンセラーの管理・監督をしています。実施人数としては分院長が58名、本部長が3名、エリアマネジャーが約20名でした。


菅野:どのような問題意識から実施されようとお考えになったのでしょうか?


目黒:導入前は、分院長やエリアマネジャーは孤軍奮闘スタイルで活躍しており、リーダーシップやマネジメントに対して意見される体制ではありませんでした。360度フィードバックを実施することで、クリニックのリーダーである院長に気付きが芽生え、よりよい状態を目指すことができるのではないかと考えたのです。
 というのも、ご存じのように、私自身が以前勤務していた会社で360度フィードバックを受けており、その効果をよくわかっていたからなんですね。


菅野:そうですね。目黒さんの以前の会社でも、弊社の360度フィードバックをご利用いただいておりましたね。つまり、目黒さんご自身が360度フィードバックの効果を認識されていて、分院長のリーダーシップ開発に活用できると考えた、ということなのですね。


目黒:はい。分院長は医師というプロフェッショナルではあるのですが、同時にクリニックのマネジメント責任も負うわけですから、そのリーダーシップやマネジメント力を高める必要があるのです。


菅野:なるほど。医師である院長に求めるリーダーシップというのは、具体的にどのようなものなのでしょうか?

 

目黒:弊社のリーダーシップの基本的な考えは、業績、CS(Customer Satisfaction)、ES(Employee Satisfaction) の3つを高いレベルでバランスさせるというものです。しかし、これまではどうしても業績に主軸が置かれて、プロセスはあまり意識されていませんでした。
 働いている人がやりがいと成長を実感できるような環境を作ることでESが高まり、それがCSの向上につながり、結果として業績が高まるというのが本来あるべき姿と考えています。そうするためには、やはりクリニックの長である分院長のリーダーシップが重要になります。具体的には経営理念・行動指針の実践度や、スタッフの働きやすい職場づくり、そして人材育成などです。
 360度フィードバックを実施して、業績視点だけではなく、業績を生み出すためのESとCSの視点をより意識してもらいたい、という思いがありました。

 

「評価」ではなく、より良い経営のための「フィードバック」であることを強調


菅野:そうはいっても、医師などのプロフェッショナル人材は、一般的に専門的な知識・技術にコミットし、組織へのロイヤリティや愛着は低い傾向にあると言われていますが、実施対象となった院長には何の抵抗もなくすんなりと受け止められたのでしょうか?


目黒:少々苦労しました。当初は周囲の一般スタッフから意見や評価されることに抵抗がありました。そこで、あくまで「評価」ではなく、周りからの「フィードバック」であり、より良いクリニック経営を行うためのヒントを得るためのものということを強調しました。


菅野:医師のようなプロフェッショナル人材であれば、自尊感情も高く、反発があっても不思議ではない気がします。

 

目黒:クリニックの業績を上げるためには分院長も医師として施術を行う必要があります。実際、マネジメントに興味がなくても、自分で施術をより多くこなすことで業績を上げることができます。しかし、先ほどお話したように目先の業績だけでなく、ES、CSの観点を大事にしなければ、組織の基盤が揺らぎかねません。そこで人事評価も業績、ES、CSの3つの総合点で行うようにしました。
 そして、360度フィードバックは結果指標として扱うのではなく、そうした結果を出すためのプロセスであるという位置づけにしました。そのような人事制度の見直しも一緒に行いながら、最終的には納得してもらえました。


菅野:実際の回答結果の本人へのフィードバックはどのように実施したのですか?


目黒:弊社では、代表の総括院長の下に副統括院長、さらに複数クリニックを統括するエリア統括ドクターを配置した組織体制をとっています。基本的にはエリア統括ドクターが管轄のクリニックの分院長にフィードバックをするようにしました。ただし、360度の回答結果が良い状態でないところについては、フィードバックの効果性を高めるために統括院長から直接フィードバックを行うこともしました。プロ意識が強い医師であるがゆえに、同じ医師からの助言は傾聴姿勢が高いというところもあるからです。

 

分散していたクリニックのベクトルが一致してきた


菅野:フィードバックを受けて、分院長の反応はいかがでしたか?

 

目黒:実はこんなことがありました。ある分院長から感謝のメールをもらったのです。その方は業績に対しても理念実現に対してもアグレッシブで、発言も的確でリーダーシップ力ある素晴らしい分院長でしたが、360度フィードバックの結果を見ると職場の状態はあまり良くありませんでした。
 理想が高すぎて、周囲に対して厳しく、一方的に考えを言う傾向があり、スタッフはそれに応えることができず困っていたのです。他者からのフィードバックを得たことで、自分が今まで何をしていたか気づかされたそうです。他責ではなく自責に切り替わり、そのことに感謝していました。これはちょっと嬉しかったですね。


菅野:なるほど、それは嬉しいトピックですね。2期実施されて、とくに感じていらっしゃる効果はどのようなことですか?


目黒:そうですね、3つの効果を感じています。1つ目は、分院長に期待されるリーダーシップ発揮の方向感を認識してもらうことができてきたことです。業績オンリーではなく、ES、CSが重要だという方針に対して、ベクトルが合ってきたなということを感じます。
 2つ目は、クリニックの長としての言動がチームワークに大きな影響を与えることを理解してくれたことです。組織開発の重要なキーワードである「関係性の質」を高めていくきっかけになっていると感じます。
 3つ目は、やはり分院長自身の成長です。この業界の特徴でもありますが、分院長といっても、30代が多く若手の医師がほとんどです。伸びしろがあって、今後、医師としてもリーダーとしても成長につながると思います。

 また、フィードバックを行うことは上司に当たる医師にとっても関係性を高めるトレーニングの機会になったようです。

 

プロフェッショナリズムとリーダーシップ その両方を高め組織力につなげる

 

菅野:組織全体としても良い影響が出そうですね。


目黒:はい。クリニックの長である分院長が医師としての役割と、リーダーとしての役割、双方が重要であることを認識することにより、クリニックのチーム力が高まっていくと思いますし、組織全体としてのパワーをもっと発揮できるようになると思います。
若い医師たちはマネジメントとかリーダーシップと言われても、何をすればいいのか分からない人が多いんですね。それが360度フィードバックによって、リーダーとして期待されていることや、不足していることに気付くことができた。これは大きいと思います。


菅野:これから、知識労働の比重がますます高まる中、企業内のプロフェッショナル人材をどのように処遇・活用していくかは重要なテーマになっていくと思います。そういう意味でも示唆に富む事例だと思います。

 

目黒:もちろん、いきなり全員が期待レベルまでいくのは難しいと思います。しかし、1人でも期待レベルの人が誕生すれば、その人がモデルケースになって組織全体に好影響を与えるものと期待しています。


菅野:ところで、弊社のサービスについてはいかがですか?


 黒:非常にいいと思います。オペレーションをすべてお任せすることができますし、こちらの
 要
望に対して、臨機応変にかつ迅速に対応していただいて、大変満足しています。


 菅野:ありがとうございます。お客様の状況やご要望に応じて柔軟に対応できることは、弊社の
 強みの一つと考えております。

 

 目黒:360度フィードバックはいろいろな業種・業界で活用できると思いますね。例えば、流通
 や飲食だとエリアマネジャーが複数店舗を定期巡回によりマネジメント状態や育成状況を把握・
 確認しています。それはそれで有効な方法だと思いますが、補完するツールとして日々一緒に働くスタッフからの意見・ア ドバイスである360度フィードバックは有効だと思います。


菅野:確かに多店舗展開している飲食店や流通業などでは、店長のマネジメントが直接的に業績や人材のリテンション、育成に大きく影響しますね。店長マネジメントの支援となるようなフィードバック情報はとても有効だと思います。

菅野:最後に今後の課題や予定は何かありますか?


目黒:率直に言うと、会社の成長スピードに人材の確保・育成がついていけていない点です。複合的に対策を講ずる必要がありますが、その一つとして360度フィードバックの対象を各クリニックの主任にまで広げようかと考えています。主任というのはクリニックの各職種のリーダーです。主任の力量によりスタッフの成長や業績結果に大きく影響がでます。この層を強化するために360度 フィードバックを含め、教育体系を検討しているところです。


菅野:主任層の底上げができれば、人材育成にも良い影響が期待できそうですね。本日はお忙しいなか、貴重なお話をありがとうございました。

 

 

 

  • <企業紹介>

    ダウンロード (2)

    ◎社名/SBCメディカルグループ 湘南美容クリニック
    ◎事業内容/美容整形、医療脱毛、AGA薄毛治療、美容歯科治療等
    ◎創立/2000年3月

    ◎URL/https://www.sbc-med.com

     

    <PROFILE>

    目黒 勝道(めぐろ まさみち)要 

    湘南美容外科クリニック  ランジェコスメティーク株式会社 コーポレート本部本部長

    1987年 大学卒業後、(株)Yヒガ・コーポレーション(現 ヒガ・インダストリーズ)に入社。ドミノピザ
    業部にて、 日本初の宅配ピザのオペレーション構築に従事。
    2000年 スターバックスコーヒージャパン(株)に入社。店舗運営・人事・教育分野で成長期オペレーションの
    基盤を構築。組織開発マネジャーとしてミッションマネジメント推進施策に従事。
    2012年 (株)クロスカンパニー(現 ストライプインターナショナル)入社。人事部長として採用・育成・評価
    の 各体制を構築し、企業成長を人事領域からサポート。

    2014年 湘南美容外科クリニックグループ ランジェコスメティーク株式会社に入社。コーポレート本部長とし
    て人事制度構築・運用による組織力向上に向け、360度フィードバックやESサーベイ、ミステリーシ
    ョッパー制度を積極的に導入し、状態の可視化による改善施策を実践中。